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TBSの買収防衛策発動か――楽天による株大量取得の影響
●  ポイズンピルの発動間近?
  インターネットモールを運営するネット企業の楽天がTBSの株式を大量取得し、経営統合を提案している。あるニュース番組ではTBSの無策ぶりを批判する声が聞かれたりもするが、実はTBSは買収防衛策をすでに導入しており、「買収を仕掛けられたらまず時間を稼いで対応を協議する」という効果は発揮している。ただ実際に発動するとなると800億円相当の新株が発行されるため、既存の株主は自分の持ち分が薄まることになり、既存株主の反発は必至だ。
  TBSの買収防衛策は「ポイズンピル(毒薬)」という最もポピュラーな手段だ。敵対的買収者が株式を大量に取得して企業を買収しようとした場合、新株を発行して買収者以外の株主に取得してもらい、買収者の持つ株式の割合を強制的に引き下げ、影響力を弱めることになる。
  例えば、50%の株式を取得され経営権を握られたとしても、新たに60%の新株を発行すれば、50%の持ち株比率は31%まで低下し、経営権までは握れなくなる。買収者が企業に手を出した瞬間、新株という「毒」が回るためこう名付けられた。
●  毒は買収者だけでなく既存株主にも
  しかし、この毒薬は買収者だけでなく既存の株主にとっても同じように毒になることが問題だ。60%もの新株が発行されれば、既存の株主も買収者と同様に持ち分を薄められる(希薄化)。それに応じて株価が急落すれば、大損を被ることになる。
  TBSのポイズンピルにも同じことがいえる。TBSの経営陣は敵対的買収者が20%超の株式を取得したり、株式公開買い付け(TOB)による買収を仕掛けられたりした場合、ある投資会社に800億円分の新株予約権を発行し、買収者の持ち株比率を下げることができる。楽天が一気に株を買い占められずにいるのは、TBSが用意したポイズンピルを発動されることを恐れているからだ。大量買占めまで二の足を踏ませ、時間稼ぎをするという目的は達せられている。
  ただ、楽天の買占めが20%を超え、TBSが投資会社への新株発行に踏み切ると、既存の株主が高値で買った株式は希薄化して株価が急落し、大損する可能性がある。実際そうなれば訴訟に発展することも考えられる。
●  特別委員会の評価次第で形勢逆転も!?
  こうした問題を抱える買収防衛策のため、TBSの経営陣はポイズンピルを発動する前に、それが妥当かどうか判断してもらう第三者機関「企業価値評価特別委員会」を設けている。
  楽天サイドの提案が魅力的で、一緒になることでTBSの企業価値が向上し、株主のためになると特別委員会が判断すれば、この時点でTBSの経営陣はポイズンピルを発動できなくなり、楽天の軍門に下ることもあり得る。どちらにしても、しばらく目が離せない状況が続くだろう。
  当記事は、平成17年10月18日現在の情報をもとに、あくまで筆者の見解や予想、考え方を紹介したものです。
2005.10.24
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