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経営幹部を育成する選抜人材教育の現状
●  選抜教育は上場企業の7割が実施
  企業が将来の経営幹部の育成に向けて実施している、選抜人材教育の現状と課題に関する調査の結果がまとまった。
  実施の現状については、選抜人材教育を実施していると回答した企業は53.7%(2004年調査53.7%)に上る。導入検討中の企業23.9%(同26.9%)を含めると、合計77.6%と8割近い企業(上場企業に限る実施率は71.1%)が実施していることが分かった。
  実施している企業の今後の方向性では、「今以上に力を入れたい」とする企業が51.8%(同52.8%)と「現状維持」の45.5%(同41.7%)を上回り、今後、選抜研修への取り組みは強化される傾向が見てとれる。
●  教育カリキュラムの目的は「マネジメント全般知識」と「リーダーシップ」
  では、選抜人材教育の形態を見てみると、複数回答ではあるが、「社内集合研修」が67.9%と全体の約7割、「社外プログラムへの派遣」も64.2%と多い。ほかにも割合は少ないが、「関連会社への出向」によってマネジメント経験を積ませるもの(16.5%)、「国内外大学院への派遣」で経営学を学ばせるもの(15.6%)などが挙げられる。
  選抜研修で重視したい内容は「マネジメント全般の知識」が76.6%(2004年調査75.0%)と最も多く、「リーダーシップ」が52.3%(同48.5%)と続く。以下、「組織の方向性やビジョンを描く構想力」が36.9%(同38.9%)、「正しい環境認識のうえでの判断力」が27.9%(同27.8%)、「多様な発想力」が27.9%(同25.0%)、「問題解決力」が24.3(同24.6%)などとなっている。
  経営陣に加わって欲しい人材としては、会社経営にかかわる幅広い知識とリーダーシップが欠かせないと考えられているようだ。
●  課題は納得性のある選抜基準づくり
  一方で、選抜人材教育は日本では歴史も浅いところから、運営についてはまだまだ課題点も多い。最大の課題は「選抜方法の納得できる基準がない」が56.0%(2004年調査48.5%)である。また、「(対象者が)忙しくて受講できない」が44.0%(同53.7%)、「良いプログラムや講師を見つけるのが困難」が44.0%(同44.0%)と、半数近い企業が悩んでいる様子がうかがえる。
  次に「選ばれない人のモチベーションが低下する」という課題が38.0%(同34.3%)と、多くの企業が回答している。さらに「選抜人材教育の効果が見えない」という深刻な回答も34.0%(2004年にはない選択肢)。また「教育予算が限られている」との社内的な悩みも18.5%(同24.6%)の企業がかかえている。
  選抜人材研教育自体の課題点としては、「選抜基準が社内的に納得できる基準がない」、それに伴い「選抜されなかった社員の不平・不満・モチベーションの低下が発生する」という2点につきる。また、研修の結果や成果が見えにくいのも実施サイドとしては課題である。運営上の課題としては、効果のあるプログラムがないことや、対象者が研修に集まれないこと、予算が少なく、効果があると思われるプログラムを組めないことなどに集約される。
  選抜教育は、マネジメントの質を高めるうえからも今後も欠かせないだろう。ただし、研修方法はOffJTの机上の社内外のプログラムでは効果が期待できないのは当然である。子会社や社外でのOJTによるマネジメントスキルの体得こそが、効果的なのではないだろうか。
出所:財団法人 社会経済生産性本部「将来の経営幹部育成に向けた選抜人材教育に関する調査(2005年10月)」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.10.31
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