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6割超の人が労働組合の必要性を認めている!?
〜平成16年 労使コミュニケーション調査の結果〜
●  労使間には意思疎通のギャップあり
  厚生労働省は10月14日「平成16年 労使コミュニケーション調査」の結果を発表した。この調査結果の中で、88.8%の事業所が「労使コミュニケーション(労使間の意思疎通)を重要だと認識している」という結果になった。また、労使間の意思疎通が「良好」と答えた割合は事業所側61.6%に対し、労働者側44.0%とやや開きがあるが、これはある程度予測のつく範囲であるといえよう。
  では、どういう面での意思疎通を重視するかについては、「職場の人間関係」とする割合は、66.4%、「日常業務改善」63.1%、「作業環境改善」50.4%となっている。また注目すべき点としては、労働組合のある事業所に限って見た場合には、「賃金、労働時間等労働条件」が56.8%と高い割合を占めている。
  サービス残業が社会問題として取り上げられ、ここ数年の間に未払い残業代の支払命令を労働基準監督署から受けた企業も多くみられる。労働組合のある企業は、労働組合とこの難解な課題について「真剣に話し合うことを最優先にしている」との声も多く聞かれる。
●  経営状況や経営方針の周知を
  経営状況や経営計画・方針などを従業員に「周知している」事業所の割合は96.8%となっている。かなり高い数字になったが、事業所側としては、「周知している」つもりであっても、実際のところは機能していないケースも多いのではないだろうか。また、周知はしていても労働者がどれだけ真剣に理解し、それを行動などに生かしているかという点では大いに疑問が残るところである。労使のコミュニケーションの活性化により、業績をアップさせるためには、経営状況や経営方針などはわかりやすく伝えていくことが必要であることはいうまでもない。
  では、周知している事業所について周知方法について見てみると、「従業員全員の集まる場(朝礼等)で説明 する」が68.6%、「一定の役職者に説明する」が64.6%となっている。企業規模別では、おおむね規模が大きいほど、「社内報や掲示板等で伝える」、「労使協議機関、従業員組合等の既存の常設機関で説明する」とする事業所の割合が高くなっていることが分かった。
  しかし、企業規模が大きくても年に1回程度は社長の経営方針などを直接聞ける場(ビデオなども含む)を設けて全体で集まることにより、「ヒト」と「ヒト」との結束を強くしている企業も多いようだ。
●  労使の新しいコミュニケーションスタイルの構築
  労働組合について、「どの程度必要であると考えているか」を見てみると、「是非必要である」とする労働者割合は26.9%、「どちらかといえば必要である」36.1%、「どちらともいえない」25.2%、「必要ではない」11.7%となっている。労働組合に加入している人の割合は年々減少してきているが、今回の調査結果を見る限りにおいては、必要としている労働者の割合が比較的多かったことは新しい発見といえるであろう。
  労働組合組織率低下の背景には、大企業のリストラや新規採用の抑制、正規雇用から非正規雇用への置き換えなど労働力の流動化が大規模に進められていることなどが挙げられるが、時代の流れには逆らえない。
  労働力流動化時代においては、労働組合に代わるものとして、画期的な新しい労使のコミュニケーションスタイルがベンチャー企業などから生まれ、全産業に浸透していくことを望みたいところである。
出所:厚生労働省「平成16年 労使コミュニケーション調査結果の概況」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2005.10.31
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