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道路特定財源の暫定税率は本則税率に戻るのか?
●  暫定税率を維持したまま一般財源化したい政府・財務省
  政府税制調査会は10月25日、2006年度税制改正に向けての議論を再開した。その中で、小泉首相が財政再建の議論に関連して検討を指示した道路特定財源の一般化の議論も本格化する。
  道路特定財源は、使途が道路整備に限られていることから、一般会計に組み入れて社会保障費に充てるなど使い道を自由にし、財政再建に役立てたい考えだ。だが、問題は現在道路特定財源は本則税率を上回る暫定税率が適用されていることである。
  道路特定財源の税収は、揮発油税や自動車重量税、石油ガス税、軽油引取税、自動車取得税など合計で5兆7,336億円にのぼる。このうち、石油ガス税をのぞいてすべての税目に暫定税率が適用されている。例えば、税収が3兆円近い揮発油税は本則税率24.3円/リットルが暫定税率48.6円/リットルだ。
  一般財源化を機に本則税率に戻せば税収はほぼ半減する。単純計算で2兆9,000億円の減収は、来年度税制改正で確実視されている定率減税の廃止による増収が3兆3,000億円であることを考えれば、なんとも痛い。政府・財務省は、財政再建のためには暫定税率を維持したまま一般財源化したい考えだ。
●  「受益者負担」という前提に崩壊の危機
  ところが、そもそも使途が道路整備に限られる道路特定財源は、受益者負担という考え方から、道路の主な利用者である自動車の所有者や使用者が負担している。その使途を一般財源化して拡大することになれば、受益者負担という前提が崩れ、本則税率に戻すべきだという意見がより説得力あるのもうなずける。
  加えて、公共工事の減少や道路公団が民営化されたことなどから、今後道路整備に対する資金需要が減少する方向にあり、暫定税率の必要性が薄れてくる。
●  暫定税率廃止はCO2の増加につながる可能性が
  このように、道路特定財源の暫定税率をめぐる議論は一筋縄ではないが、そのような折、環境省から暫定税率維持を擁護する報告があった。同省の試算では、暫定税率を、揮発油税や軽油引取税、地方道路税について廃止した場合、ガソリンや軽油の価格が20%低下すると仮定して、消費量が増えることにより、自動車の二酸化炭素(CO2)排出量の増加が2012年時点で年間約1,500万トンから最大2,200万トンにのぼる。この増加量は、京都議定書目標達成計画において示された自動車の燃費改善によるCO2の削減見込量2,100万トンを超えるものになるという。
  道路特定財源を暫定税率から本則税率に変更することは、長期的には、効率的な自動車技術開発に伴うCO2排出量の削減努力を、無にする可能性がある、と環境省は指摘する。
  これまで受益者負担で道路整備に限定していた特定財源の使途を一般化するのであれば、本則税率に戻すべきだという意見ももっともだが、財政再建や地球温暖化防止も重要課題である。道路特定財源をめぐる議論は難航必至といえよう。
出所:環境省の試算は「環境税を巡る諸論点」の23P〜
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.10.31
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