>  今週のトピックス >  No.1136
経理処理の不適切が過去最大
●  大幅増の根源となった特殊要因
  内閣から独立した財政監督機関である会計検査院は、日本国憲法第90条の規定により、国の収入支出の決算を検査し、会計検査院法第29条の規定に基づいて、「平成16年度 決算検査報告書」を作成し、2005年11月8日、小泉首相に提出した。
  この報告書によると、経理処理の不適切や税金の無駄遣いなどを指摘した総件数は386件、金額にして936億5,724万円だった。このうち、税金の無駄使いや税金の取り損ないは合わせて、約251億円である。
  ただし、総件数や指摘金額が昨年以前と比べて大幅に跳ね上がったのは、国立大学の法人化にともなう資産評価の査定ミスという特殊要因が最大の原因である。会計検査員によると、「今回限りの特異なもの」ということだ。
  参考までに、昨年の「平成15年度 決算検査報告書」によると、経理処理の不適切などの指摘件数が305件で、金額にして430億1,218万円であった。
●  重責を担う会計検査院の役割
  会計検査院は内閣から独立した憲法上の機関として、国や法律で定められた機関の会計を検査し、会計経理が正しく行われるように監督する役割を持つ。そして、明治13(1880)年に創設されて以来、地位などに変遷はあるが、一貫して国の財政監督機関としてその職責を担ってきた。
  日本国憲法第90条によると「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。また会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める」とある。ちなみに、会計検査院法第1条には「会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する」と記されている。
  国の根幹を揺るがすようなさまざまな不正事件を見るにつけ、今こそ会計検査院の役割が重要であると感じる。
●  3割弱は税金の無駄遣いと徴収漏れ
  筆者は不適切な経理もさることながら、約251億円にものぼる税金の無駄遣いや行政の怠慢ともとれる税金等の徴収漏れについて、その事態を憂慮する。これは会計検査院が指摘できたものだけなので、その水面下にはまだまだ国民の税金を無駄に浪費している部分があるのではないかと思う。
  今日本では、財務省や政府税制調査会などを中心に、増税論議が盛んに行われている。その根拠は「少子高齢化社会」と「国の過大な借金」だ。しかし、こういった無駄や膨張する政府を改善することなく増税を要求されても、納税者にとってはなかなか納得がいくものではないだろう。
出所:会計検査院「平成16年度 決算検査報告の概要」
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.11.14
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