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東証で三つの珍現象―個人株主の急増と「バブル」を示唆
●  大規模システム障害発生
  この11月に入ってから東京証券取引所では珍現象・珍事件が3件立て続けに起きている。いずれも背景にあるのは個人株主の急増だ。株価の大幅な上昇やインターネット取引の普及で、これまで株に関心のなかった人が取引を始めるなど、市場に参加する個人が急激に増えている。取引所や株を公開する企業はこうした個人株主急増への対応を迫られそうだ。
  一つ目の事件は11月1日に起きた東証の大規模なシステム障害。全銘柄が3時間にわたって取引できない異例の事態となった。東証は99年から人手に頼る立会場取引を閉鎖し、システム取引に全面移行した。
  現物株式は2000年から富士通製システムによって取引している。ネット証券を通じ個人の注文が増えていることに対応するため10月上旬、売買システムを増強した。この際のプログラムミスがシステム障害の原因となった。
  今年に入って取引所のシステム障害は、4日に起きた名古屋証券取引所のシステム障害を入れるともう6回目。うち3回はジャスダック、1回は大阪証券取引所だったが、いずれも売買高の急増にシステムの増強が追いつかない中で発生した。ネットを通して注文後に取り消しや訂正を繰り返す手法が、表面上の件数以上にシステムに負担をかけるためにこうした障害が頻発しているのだ。
●  売買高バブル期の5倍に
  二つ目の現象は11月8日、東証一部の売買高が45億株を超え過去最高を記録したこと。80年代バブル期のピーク時でも1日の平均売買高は約10億株で、この日はその5倍近くに達した。「売買高」とは市場全体で取引された株式数量のことを指す。ちなみに売買高に株価を乗じたものが「売買代金」で、株式の取引金額の合計である。
  売買高が膨らむのはそれだけ活発に株の取引が行われているからだ。それを支えているのがネット個人投資家の回転売買。最近では携帯電話で売買注文を出す個人のネット投資家も増えている。
●  三菱自動者株の急騰の背景
  個人株主の急増は、個別銘柄の株価形成にも大きな影響を与え始めている。それが三つ目の珍現象ともいうべき、三菱自動車株の急騰だ。リコール問題などによる経営危機で一時70円台まで下がっていたが11月4日、約1年半ぶりに300円台を回復した。
  再建途上の同社株はアナリストの評価では100円を下回ることが多い。これは推測に過ぎないが、同社株を購入しているのは、大半が回転売買で短期の値上がり益を狙うネット個人投資家とみられる。それを裏付けるように、同社株は毎日のように売買高で上位に入る。
  最近の株価上昇は日本企業の復活が主な要因であることは間違いない。だが一方で三つの珍現象が示唆するように、個人投資家による過熱したネット取引が引き起こす「バブル」の側面も考慮する必要があるだろう。
2005.11.21
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