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申告意識が薄いネット企業を狙い撃ち
●  無申告加算税引き上げへ
  財務省は、個人や法人が申告を失念していた場合に罰則的に課される「無申告加算税」を平成18年度から引き上げる方向で検討に入ったようだ。年末の与党の税制調査会で税率などを決定し、来年初めの通常国会に提出する税制改正法案に盛り込む予定だ。
  加算税というのは、所得税や法人税、相続税など国税のあらゆる税目に共通して適用されるもので、税金の申告が必要な納税者が一定の期間内に所得等を税務署などに申告しない場合に、本来の納税額とは別に課税されるものである。加算税には、無申告加算税のほかに過少申告加算税や重加算税がある。
  今回の財務省の案では、このうち無申告加算税の税率を現行の15%から20〜30%に引き上げようと考えている。ちなみに、現行のそのほかの加算税の税率としては、過少申告加算税が最高15%で、重加算税が最高40%となっている。
  最近では、消費税の申告書を提出し忘れていた関西電力に対し12億円の無申告加算税が課された事件も記憶に新しいところだ。このケースでは、納税は済ませていたが申告書の提出のみ数日間遅れたようだ。その結果、12億円の無申告加算税となった。
●  引き上げの背景には納税に対する希薄な意識が
  この財務省の無申告加算税を引き上げようとする背景には、昨今のインターネット商売における税逃れが多発しているからだ。
  国税庁が今年6月までの平成16事業年度におけるインターネット取引における税務調査の結果は、去年の1件平均899万円の申告漏れに対して、去年より16.4%多い1件平均1,112万円であった。昨今のインターネット取引における活況さを表すとともに、財務省がネット取引に対して課税強化をせざるを得ない状況がうかがえる。
  インターネット商売は、ネット上ということもあって納税に対する意識が薄い場合が多い。特に個人で始めたサイトなどでは、税に対する無知もあってか、無申告状態で何年も事業を継続している場合があるのは、事実だ。
  こういったことに着目して、財務省は無申告加算税に対する罰則を強化したのである。
●  来年3月でIT系の特例が一斉廃止
  インターネット企業に関係する税制としては、30万円未満の資産が全額経費処理できる「少額減価償却資産の特例」や、税額控除もある「IT投資促進税制」などがある。「少額減価償却資産の特例」は30万円未満というところから考えると、特にパソコンなどが対象金額に当てはまることが多い。
  そしてこれらの有利な特例が、実は来年の3月31日で廃止されるのだ。先ほどの無申告加算税といい、このIT系の特例廃止といい、まさにネット企業狙い撃ちといえるのではないだろうか。
  これからは、ネット企業も税から我が身を守るために今まで以上に税に対して関心を持っていただきたいものだ。必要な納税をすると同時に、そのためにできる節税対策を実行すべきだろう。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.11.28
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