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団塊世代の退職の影響は企業にとってプラス? それともマイナス?
●  メディアによるマイナスの影響が“大”
  商工中金は11月16日、「団塊世代を中心とした中小企業の雇用動向調査」の結果を発表した。この調査は、団塊世代を中心とした中小企業の雇用動向などを分析することを目的としており、有効回答数が2,130社と一般的なアンケートに比べると回答数も多く、中小企業が中心のためほかの企業も大いに参考にしているものである。
  一般的に団塊世代の退職は、技術の継承ができなくなるという意見が多く、イメージ的にはマイナスの影響が大きいとする報道なども目立っている。しかし大事なことは実際の企業の現場においてどのようにとらえられているのかであり、今回の調査結果はそのあたりが明確になっており、大変興味深いところである。
●  退職の影響は「どちらともいえない」が7割超
  調査結果によれば、団塊世代の退職によるプラスの影響とマイナスの影響のどちらが強いかの質問に対しては、「どちらともいえない」が74.2%と大部分を占めた。「プラスの影響」(13.2%)と「マイナスの影響」(12.7%)もほぼ拮抗している。多くの企業が人件費削減という収支に直結するプラスの側面を認めながらも、有意な人材を失うマイナスの側面を強く感じており、一概に団塊世代の引退の影響を推し量りかねている様子がうかがわれる。
  業種別にみると、製造業では「マイナスの影響」(13.7%)が「プラスの影響」(11.8%)を上回り、マイナスの影響を見込む企業が多い。その一方、非製造業では「プラスの影響」(14.2%)が「マイナスの影響」(11.9%)を上回っている。
●  一斉退職による退職金倒産もあり得る!?
  団塊世代の退職によるマイナスの影響の内容については、「ノウハウ喪失」が47.4%と最も高く、以下「退職一時金等の負担」(34.2%)、「技術水準低下」(33.3%)、「労働力不足」(27.5%)の順で続く。ノウハウ喪失については、企業の生命線ともいえるところであり大きなマイナスの影響とすぐに理解できるが、一見忘れがちな点として「退職一時金等の負担」が挙げられる。
  事前に退職金の準備をしている企業にとっては問題ないが、そうでない企業にとっては一番頭の痛い問題であろう。「退職金倒産」という言葉をセミナーや講演などで聞く機会は多いが、団塊世代の一斉退職はキャッシュ不足をもたらし、経営を悪化させ、企業を倒産に導くきっかけになることもあるのではないだろうか。
●  生き残りのカギは優秀な人材の確保
  団塊世代の退職を控えた採用環境については、採用が困難と感じている企業が容易と感じている企業を上回っている。また今後の採用環境についても、現在より「好転」(採用が容易となる)は7.6%にとどまり、「悪化」(採用が困難となる)が25.0%と4 分の1の企業がさらに採用環境の悪化を見込んでいる。
  団塊世代が引退期を迎える今後数年、中小企業の採用環境は厳しくなることが見込まれている中で、どのように工夫して優秀な人材を採用していくかが、大競争時代の中での生き残りのカギになるのではないだろうか。
出所:商工中金「団塊世代を中心とした中小企業の雇用動向調査」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2005.11.28
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