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上場株式売却時における株式譲渡益課税
  株式市場が好調である。東京株式市場の日経平均株価が5年ぶりに1万4,600円台を回復、2001年5月につけた小泉内閣発足後の高値を上回った(11月18日付け日経)。個人投資家の株式売買も活発化しているが、上場株式を売却した場合の税務上の取り扱いを確認しておかないと無駄な税金を払うことになりかねない。というのも、証券税制は2002年前後に低迷する株式市場に投資家を呼び込むために多くの優遇措置を定めており、複雑になっているからだ。制度の概要を説明しよう。
●  10%軽減税率など主な特例
  まず、上場株式等を売却した場合の軽減税率の特例がある。これは、上場株式等を2003年1月1日から2007年12月31日までの間に証券会社を通じて売却した場合の税率は10%(所得税7%、住民税3%)に軽減される。2008年1月1日以降や証券会社以外の売却、未公開株式などの税率は20%(所得税15%、地方税5%)である。
  次に、上場株式等を証券会社を通じて売却したことにより生じた損失のうち、その年に控除しきれない金額については、翌年以降3年間にわたり、確定申告によって株式等に係る譲渡所得等の金額から繰越控除できる「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」がある。
  また、2001年11月30日から2002年12月31日までの間に購入した上場株式等を、2005年から2007年までの間に証券会社を通じて売却した場合は、選択により、その購入価額が1,000万円に達するまでのものに係る売却による所得は非課税となる。ただし、次に説明する特定口座(源泉徴収口座)において売却した上場株式等は、この非課税の特例の対象とはならないので注意が必要だ。
●  申告不要の特定口座(源泉徴収口座)制度
  特定口座制度は、証券会社に特定口座を開設して、その中で上場株式等を売却した所得金額については、ほかの株式等の売却による所得と区分して計算することができる制度だ。この計算は証券会社が行い、証券会社から送られてくる特定口座年間取引報告書によって簡単に申告(簡易申告口座)することができる。
  また、特定口座内で生じる所得に対して源泉徴収することを選択(源泉徴収口座)した場合には、その特定口座における上場株式等の売却による所得は申告不要とすることができる。源泉徴収口座では、売却益の10%の税率で源泉徴収される。
●  株式の取得費がわからない場合の確認方法は?
  ところで、株式を売却した場合の所得金額は「売却価額−(取得費+委託手数料)」で計算するが、悩むのは取得費である。特に相続などで取得した所有期間が長い株式では、実際の取得費がわからなくなっていることも珍しくない。
  もっとも、2001年9月30日以前から引き続き所有していた上場株式を売却した場合は取得費の特例があって、実際の取得費と2001年10月1日の終値の80%に相当する金額とを比較して、いずれか有利な方を選択できる。実際の取得費がわからなければ後者を取得費として収入金額から控除すればいいわけだが、それでもあきらめきれない場合は国税当局が認めた実際の取得費を確認する合理的な方法がある。
  それは、まず、(1)取得時に証券会社から交付される取引報告書、(2)取引証券会社の顧客勘定元帳(商法上10年の保存義務がある)、(3)日記帳や預金通帳などでの本人の手控え、などで確認する方法だ。これらがなければ、名義書換日を調べる。保有株券の裏面や株主名簿・複本(株式の発行会社・証券代行会社)で取得時期を把握し、証券会社のデータベースや当時の新聞記事などの統計情報で取得価額を確認することになる。
参考資料:「個人の方が上場株式等を売却した場合の株式等譲渡益課税について」(国税庁)
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.11.28
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