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変額個人年金保険本来の視点を取り戻そう
  銀行の保険窓販が2002年10月に解禁されたことにより、変額個人年金保険(以下、変額年金)が急速に純資産残高を増加させていることは、新聞報道などによってご存じの方も多いだろう。そこで、今回はこの変額年金について、販売サイドが行ってきたアドバイスについて考える。
●  忘れ去られた変額年金本来の特徴
  変額年金は、保険料のうち保険関係費用※1を控除した部分が、特別勘定によって運用されることになる。本来の変額年金の最大のメリットは、定額年金のように将来の基本年金額を確定させない一方で、特別勘定の運用結果によって基本年金額が変動することであろう。
  しかし、銀行窓販解禁後の変額年金販売は、被保険者死亡の際に設けられている非課税枠※2や、死亡時の保障機能をクローズアップして販売してきた事実は否定しがたい。
  さらに、特別勘定でありながら、年金年額の最低保証タイプなども登場し、基本年金額いわゆる将来の受取額の変動という変額年金本来の特徴は今や忘れ去られた感さえあるのである。中でも、非課税枠のアピールによる販売は、本来の変額年金のメリットから考えれば、本末転倒といえる。この背景には、販売サイドが変額年金の特徴である「元本割れが起こりうる」という結果を恐れるあまり、変額年金の付随的な特徴をアピールしている実状があるのではないだろうか。
●  変額年金は資産運用を行う節税商品!?
  変額年金の本来の魅力を今一度基本に立ち帰って考えるために、以下のデータに注目してほしい。このグラフは、銀行の保険窓販が解禁された2002年10月末からの日経平均株価の推移である。
【日経平均株価】
  2005年11月28日現在の日経平均株価は、1万4,986円まで上昇し、実に2002年10月末の日経平均株価(8,640円)に比べ約73%増となっている。
  あくまで仮の話であるが、変額年金の窓販解禁当時、変額年金の本来の魅力である将来の基本年金額の変動に着目し、特別勘定に日本株を組み込んでいた場合は、単純にはいかないまでも、この日本株上昇のメリットを享受できたはずである。中でも、この上昇を享受できる可能性は、年金額の最低保証機能など本来の変額年金機能ではないものを付加していないほど高くなるといえる。
  現在の日本株上昇を見てこのような議論を行うことは、結果論的であり、説得力はないという方もいるかも知れないが、その一方で、「リスクをあまり取らずに資産運用を行う節税商品として」の変額年金ということを求めた結果、リスクの裏返しである「リターン」を享受できなかった加入者が多くいた可能性があるということも事実である。
●  変額年金と投信の窓販は2大収益源
  変額年金の窓販は、今や投信窓販とならび銀行のリテール部門における大きな収益源に成長しつつある。しかし、その裏側で89年のバブル崩壊以後、ITバブルに続く本格的な景気回復局面となっている日本経済において、その日本経済回復をリターンという形で享受できなかった変額年金加入者もいるという事実は忘れてはならない。
  今後、変額年金窓販の販売担当者に対する教育は、「資産運用の基本は、リスクをとりそのリスクに見合ったリターンを享受する」というある意味当たり前の視点を今一度教育する時期がきているのかも知れない。
※1 :保険契約の管理、死亡保険金などの支払いに充てられる費用で、商品ごとに異なるが1〜3%程度。
※2 :ほかの生命保険と通算して全体で500万円×法定相続人。
2005.12.05
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