> 今週のトピックス > No.1152 |
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確定申告に戸籍は必要? |
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![]() ● ベストセラー作家が戸籍偽造の罪で逮捕
2005年11月25日までに警視庁荻窪署は、知人に成り済まし不正に婚姻届を提出したとして、公正証書原本不実記載・同行使の疑いで、ベストセラー作家でもあるエッセイストY容疑者ら3人を逮捕した。警察の調べによると、2001年、Y容疑者は自身法律上の夫がいるにもかかわらず、F容疑者(Y容疑者の知人)の戸籍を使い同容疑者に成り済ましてS容疑者(高校教師)との婚姻届を静岡市役所に提出し虚偽の戸籍を記載させたようである。
少し状況が複雑なところもあるので、もう少し詳細に事件の概要を解説する。まずY容疑者には法律上の夫がいる。そしてその法律上の夫とは別に、約10年前から内縁の夫である高校教師のS容疑者と同居することになった。 内縁の夫と同居生活を送る中、書籍が80万部以上のヒット作となった。Y容疑者は、法律上の夫とは正式な離婚手続きを経ず、内縁の夫と同居する中、大金を手に入れたこととなる。そしてその3年後である2001年に、知人である飲食店アルバイトのF容疑者の戸籍を、数百万円で買い取ったようだ(もちろん法律上そのようなことをしてはいけない)。そしてY容疑者は、知人のF容疑者の戸籍をもってS容疑者との婚姻届を静岡市役所に提出した。 結果、Y容疑者は本名を偽って生活することになった。 ![]() ● 他人の戸籍を“買う”裏ワザの理由
警察の取り調べに対して、Y容疑者は「本が売れて、確定申告や保険に加入する際に戸籍が必要になった」と供述している。しかし、確定申告に戸籍が必要かという問いに対しては、「確定申告書に戸籍のコピーを添付する必要はないので、確定申告に戸籍は必要ない」のである。
それではY容疑者がいう、確定申告に戸籍が必要とはどういうことか? 出版による印税収入を確定申告しようとする場合、全国で500カ所以上ある税務署のどこに提出してもいい、というわけではない。次の状況に応じて以下にかかげる場所になる。 ![]()
![]() ● 虚偽の実態は離婚時の財産分与逃れか
ということで、事業場や事務所などがない場合は、通常住所地を管轄する税務署で確定申告をすることになる。
しかし、Y容疑者の場合は法律上の夫と婚姻関係が継続しているため、住民票は法律上の夫のもとにあったと推測される。もしY容疑者が住民票のある税務署で確定申告を行うと、印税収入の大きさから、長者番付の対象となりその税務署にて所得税額などが公表されることになるであろう。また、その後の予定納税などの通知がY容疑者の住民票にある法律上の夫のところに郵送されてくることになる。すると、夫に所得がばれてしまい、法律上の夫と正式に離婚するときの「財産分与」などに影響すると考えたのではないだろうか。また住民票を移動するという方法も考えられるが、法律上の夫に現在の住所を知られてしまうというリスクがあるのでできなかったのであろう。 一部の報道を見ていると、書籍の中でY容疑者は過去の経歴について虚偽があったようである。こういったこともあって、(普通の人では考えにくいが)戸籍を買うという違法行為を行い、簡単に本名を捨てられたのかもしれない。 節約カリスマ主婦といわれたY容疑者は、特に主婦層に強い影響力があったようだ。信奉者の主婦の方々には同情する。 ![]() (今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
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2005.12.12 |
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