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税関の事後調査における追徴税額が初めて100億円突破
●  申告漏れ課税価格は約1,162億円
  財務省税関局は12月6日、税関において、今年6月までの1年間に輸入業者などを対象に事後調査した結果、申告漏れ課税価格約1,162億円を把握、約108億円の税額を追徴したことを明らかにした。追徴税額が100億円を突破したのは1968年の調査開始以来初めてのこと。実地調査した輸入業者は5,223者で、うち63.9%にあたる3,337者に非違があり、その申告漏れ課税価格は前年度を20.7%上回る1,161億6,762万円で、追徴税額は108億4,396万円だった。
  追徴税額は、関税が43億8,412万円、消費税が64億5,983万円で、内訳は増差税額が99億9,781億円、加算税額が8億4,615万円。増差税額が多い上位5品目(関税分類ベース)は、「調製食料品」(22億8,757万円)、「電気機器」(17億9,532万円)、「機械類」(8億7,078万円)、「織物衣類」(5億9,342万円)、「編物衣類」(4億5,760万円)となっており、これら5品目で全体の非違の6割(増差税額ベース)を占めている。
●  目立つ貨物代金や無償提供物品等での申告ミス
  申告漏れが増えた背景には、国際化の進展の中で、日本の企業が海外に生産拠点の一部を相次いで移転し、部品や完成品の輸入が増えたことにある。課税価格の原則的決定方法は、「CIF価格(貨物代金+運賃+保険料)+(仲介料、無償提供した物品等の費用等)」で算出されるが、貨物代金での申告ミスや無償提供した物品などの申告漏れが多い。
  主な申告漏れの内容は、インボイス上の決済金額以外の貨物代金の申告漏れ、海外生産のために無償で提供した原材料費用の申告漏れ、特恵関税制度の適用誤りなどがある。
  例えば、香港の輸出者からプラスチック製の玩具を輸入していたAは、輸入貨物について、当初、輸出者が便宜的に作成した仮インボイスで通関を行っていた。しかしながら、輸出者への貨物代金の支払いについては、別途決済用インボイスで行われており、当初申告価格が低価となっていたにもかかわらず、決済用インボイスによる修正申告等がなされていなかった。この非違を含めた申告漏れ課税価格は2億2,600万円、関税および消費税の追徴税額は1,400万円だった。
  また、中国から自動販売機の部分品を輸入していたBは、輸入貨物の製造に係る金型代金を輸出者に別途支払っていたにもかかわらず、貨物代金からその金型代金を相殺した後の価格が記載されたインボイスで通関を行い、その金型代金を課税価格に含めて申告していなかった。この非意を含めた申告漏れ課税価格は2億5,100万円、関税および消費税の追徴税額は1,300万円だった。
●  輸入通関後の納税申告の適否を確認する事後調査
  事後調査は、輸入通関後における税関による税務調査のことである。輸入された貨物に係る納税申告(輸入価格)が適正に行われているか否かを確認し、不適正な申告はこれを是正するとともに、輸入者に対する適切な申告指導を行うことによって、適正な課税を確保することを目的として実施している。
  調査は、輸入者の事業所等に臨場し、輸入貨物についての契約書や仕入書その他貿易関係帳票、会計帳票などを調査し、また、必要な場合は取引先等についても調査を行い、納税申告内容の適否を確認している。調査の結果、申告内容に誤りがあることを確認した場合は、輸入者に適切な指導を行うとともに、課税価格、税額などの更正により、不足税額を追徴している。
参照記事:平成16事務年度の「輸入通関後の税関調査事績」(財務省関税局)
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.12.12
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