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業績連動型により役員賞与が税務上も費用に?
●  退職慰労金からシフトしつつある業績連動型賞与
  「業績連動型賞与」というのをご存じだろうか。これは、会社の利益などの業績を事前に決められた一定の計算式にのっとって、賞与支給額を計算する制度のことである。これは、今までの年功重視で算定基準があいまいであると一般的にいわれている退職慰労金に対抗した制度で、近年、上場企業を中心に導入が加速している。
  最近の上場企業の動向を見ていると、退職慰労金を廃止して業績連動型にシフトしていく流れがある。今年度までに、東証1部上場企業においては、その1割弱にあたる1,687社が「退職慰労金」制度を廃止した。「業績の貢献度に見合っていない」という株主からの強い圧力に押された格好となっている。
●  日米で異なる税務上の取り扱い
  しかし現在税制上では、役員に支給する賞与は損金不算入となっている。つまり役員に対する賞与は、たとえ業績連動型といえども税務の計算上では費用とならないのである。また役員に対する報酬も、原則は期中での増減を認めない場合が多い。つまり、税務上は業績連動型の役員賞与や役員報酬という実務に対応しきれていないといえる。
  一方アメリカでは、対象を上場企業に限定し、かつ賞与や報酬の算定式を有価証券報告書に開示するなどの場合には、業績連動型について損金処理を認めているようだ。
  そこで与党税制協議会は、11月30日の会合で、企業向け減税として上場企業を中心に増えている業績連動型の役員賞与や役員報酬を税務上費用と認める案を、与党税制改正大綱(12月15日発表)に盛り込み、早ければ来年度からの実施を見込んでいるようだ。さらにこれには、経済活性化の狙いも見え隠れしている。
●  中小企業における業績連動型の行方
  それでは、中小企業においても業績連動型の報酬や賞与が浸透していくのだろうか。
  しかし、現在の税制上の取り扱いを考えると、浸透していくとは思えない。なぜなら、日本が参考にしているアメリカで導入されている現状は、税務上業績連動型の賞与や報酬を費用と認めるための要件として、上場企業に限定しているからである。つまり、恣意的な報酬の決め方ではなく、その賞与や報酬の決め方に客観性や透明性を必要としているということであろう。
  筆者のクライアントのベンチャー企業では、3カ月ごとに業績を明らかにし、それに応じて報酬を支払いたいと考えている。これは節税云々のためにではなく、そういった経営スタイルであるということだ。しかし、税務上それは役員賞与扱いになってしまうので、税理士である筆者は頭を悩ますことになるのである。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.12.19
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