>  今週のトピックス >  No.1159
メンタル不全に対する企業の支援体制
●  メンタル不全従業員は8割の企業で増加
  最近、中高年の自殺や企業のメンタル不全が社会問題となっているが、このたび、メンタル不全の現状とその企業の対策についてのアンケート調査の結果が報告された。
  まず自社のメンタル不全での休職者数については、64.2%と6割を超える企業の担当者が「企業規模から見て不自然ではない」と回答している。規模に比して少ないと回答する企業も18%近くある一方、多いとするのは9.5%に過ぎず、自社のメンタル不全休職者が多いという認識は少ないようだ。
  ここ5年間でのメンタル不全従業員の増減については、77.9%と8割近くの企業が増えたと回答しており、企業内でのメンタルヘルスは悪化していることが分かる。12.6%の企業がほぼ同じとしている。
  こうした状況を踏まえ、メンタルヘルスケアへの取り組みを重要課題または最重要課題と位置付ける企業は87.4%にのぼり、企業の危機感は高まっている。
●  大半の企業で複合的な取り組みを実施
  実際に行われている取り組みは、54.7%で相談・予防、復職支援などが組織的な制度として実施されている。29.5%が組織的ではないが実施していると回答している。何の取り組みも行っていない企業は14.8%に留まる。
  具体的な取り組み事項としては、「階層別の教育・研修」が70.5%、「社内の相談窓口・室の設置」が63.6%、「社外の相談機関・窓口への委嘱」が60.2%、「従業員の教育・研修」と「残業削減など労働環境の改善」がともに56.8%、「産業保健スタッフへの委嘱」と「復職支援体制の整備」、「周知・啓蒙活動」がいずれも52.3%、「心の健康やストレスに関する調査・問診」が51.1%、「担当者の教育・研修」が46.6%となっている。こうして見ると、企業が多様かつ重層的に取り組んでいることが分かる。
  メンタルヘルスに関するプライバシー保護については、相談窓口を設置している企業の82.9%が「社内に知られずに相談できる仕組みになっている」と回答している。さらに69.3%の企業が個人情報保護を定めたルールによってカバーされているとしている。外部化については、62.5%が社外の専門家・相談窓口と契約しており、23.9%が契約はしていないが必要に応じて外部を活用できるとしている。
●  復職支援は9割が体制整備
  メンタル不全休職者の復職支援については、「復職ルールがある」が60.2%、ルールはないが、「その都度相談している」が36.4%である。復職ルールのうち、復職基準については「ルールがある」が36.4%、「慣行として基準がある」が21.6%、「都度検討している」が21.6%、「医師の診断書に従う」が20.4%となっている。
  復職サポート体制については「ルールはないが産業医や担当者が面談・助言する」が59.1%、「ルールがあり、面談・助言する」が29.6%であり、それなりの支援体制は整っているようだ。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「メンタルヘルスケアに関する調査」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.12.26
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