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平成18年度税制改正大綱が決定
●  抜本的な税制改正のための地ならし
  12月15日に、自由民主党から「平成18年度税制改正大綱」が発表された。全体的な印象としては、大幅な改正項目はほとんどなく、どちらかという過去の減税策の打ち切りや今まで有識者から指摘を受けてきたいびつな部分を今の時代に即した形に修正するといった内容であった。
  新聞などではこれを称して小粒な改正などといわれていたりもするが、大綱をじっくりと読み込んでいくと、実はとても踏み込んだ内容であると実感する。それはどういうことかというと、今年の改正の位置付けが来年以後の抜本的な税制改正のための地ならし(準備段階)ではないかということである。
  最近の税制改正というのはどちらかというとつぎはぎ的で、景気に配慮した内容であった。それを今回の税制改正大綱では、つぎはぎ的な減税策を打ち切り、新たな減税策もほとんど盛り込んでいない。また、三位一体改革の一つである国と地方の税源移譲の問題でも、踏み込んだ税率改正を提議している。
  税制改正大綱の以下の文章が、今回の大綱の中身を物語っているように思える。
  「他方、わが国の経済社会構造に目を転じてみると、少子・長寿化、グローバル化など、大きな変貌を遂げつつある。少子化は予想以上の早さで進展し、本格的な人口減少社会が到来している。財政は、税収が歳出の約半分しか賄えていない状況が続いており、主要先進国中最悪の財政状況に陥っている。このような事態を前に、国民の間には、将来に対する不安感が生じていることは否めない。
  こうした状況を踏まえれば、今後は、いわゆる負の遺産を清算するという視点にとどまることなく、新しい時代を展望しながら、持続可能で活力のある、安心・安全な社会を構築するといった視点を重視し、広範な構造改革を更に一層強力に推進していく必要がある。このような改革の一環として、税制面においても、抜本的な改革に取り組まねばならない。
  平成18年度税制改正は、そのための第一歩である」。
  あえて税制改正大綱の問題点を挙げると、その中身が未だに縦割り行政で決められている点だ。つまり、税制という日本にとって非常に重要な問題は、税制だけ議論しても適切な解はなく、歳入と歳出全体の議論が必要だし、何より今後のこの国の姿をイメージした中で議論が行われるべきだ。今こそ、政府横断的なトータルな視点で、税制を論じていただきたいと思う。
●  給与所得控除を使った節税策封じ
  特に目玉がないといわれている税制改正の中でも、実務面では大きな影響があると想定される内容が項目として挙がっている。それは、「同族会社の役員報酬の一部損金不算入」である。
  これは、同族関係者が90%以上の株式を所有し常勤役員の過半数が同族の場合に、その役員報酬の「給与所得控除相当額」が損金にならないという内容である。例えば年収1,200万円なら、230万円の給与所得控除が損金不算入になるのである。この影響は非常に大きいといえる。なぜなら、多くの同族法人の法人設立理由が、この給与所得控除を使った節税策(個人と法人で経費計上できること)にあるからである。
  最後に、今回の大綱で「同族会社の役員報酬の一部損金不算入」について触れている内容を抜粋ではあるが紹介しておこう。
  「同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者等が発行済株式の総数の90%以上の数の株式を有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占める場合等には、当該業務を主宰する役員に対して支給する給与のうち給与所得控除に相当する部分として計算される金額は、損金の額に算入しない。ただし、当該同族会社の所得等の金額(所得の金額と所得の金額の計算上損金の額に算入された当該給与の額の合計額)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年800万円以下である場合及び当該平均額が年800万円超3,000万円以下であり、かつ、当該平均額に占める当該給与の額の割合が50%以下である場合は、本措置の適用を除外する」。
(今村 仁 今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.12.26
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