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2004年中の相続税の課税割合は最低の4.2%
●  地価の下落が課税割合、税負担割合を引下げ
  2004年1年間に亡くなった人は約103万人だったが、このうち相続税の課税対象となった人数は約4万3,000人で課税割合は4.2%だったことが、国税庁がこのほどまとめた相続税の申告事績で明らかになった。相続で税金がかかるのは100人に4人ということになる。この課税割合4.2%は、前年分に比べ0.2ポイントの減少で、地価の下落を受けた結果、直近において基礎控除の引上げなどがあった1994年分以降で最低の水準となった。
  相続財産額の構成比は、「土地」が53.2%でもっとも多く、「現金・預貯金等」19.9%、「有価証券」11.4%の順となっている。土地は、地価の下落を背景に、1992年分の75.9%から一貫して減少する一方、現金・預貯金等は一貫して増加している。相続財産に占める割合が高い土地の評価が下がるにつれ、年々、相続財産の課税価格が基礎控除額(「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」)内でおさまるケースが増えていることになる。
  2004年中の相続に係る課税価格は、9兆8,512億円(対前年分比4.8%減)、被相続人1人あたりでは2億2,653万円(同2.7%減)となる。税額は、1兆642億円(同5.3%減)、被相続人1人あたりでは2,447万円(同3.3%減)といずれも減少している。また、負担割合(課税価格に占める税額の割合)も、2003年相続開始分から最高税率が70%から50%に引き下げられるなどした結果、過去最低の10.8%となっている。
●  相続税調査で4,000億円超の申告漏れ課税価格を把握
  一方、2004事務年度分の相続税調査事績によると、今年6月までの1年間に2002年分および2003年分の申告事案を中心に1万3,760件の調査を実施した結果、うち86.4%にあたる1万1,895件から総額4,003億円の申告漏れ課税価格を把握した。前年度に比べ、調査件数は7.6%増え、申告漏れ件数も6.1%増、申告漏れ課税価格も3.7%増となったが、1件あたりの申告漏れ課税価格では2.3%減の3,365万円となった。
  申告漏れ税額は799億円(対前年度比4.9%減)、申告漏れ1件あたりでは672万円(同10.3%減)となる。また、仮装・隠ぺいなど意図的な不正を行ったとして重加算税を賦課された件数は、申告漏れ件数の14.2%にあたる1,690件(同10.8%減)で、その不正申告漏れ課税価格は608億円(同9.5%減)に上った。
  調査に基づく申告漏れ相続財産額の構成比は、「現金・預貯金等」が37.6%(1,483億円)を占めてもっとも多く、貸付金や生命保険金などの「その他」が24.2%(954億円)、「土地」が20.6%(815億円)、「有価証券」が15.8%(625億円)の順となっている。申告漏れの手口としては、多額の現金や公社債を自宅などに隠していたケースや、預貯金が家族名義だったことから申告除外するケースが相変わらず目立つという。
●  海外の現金・預貯金などの相続財産もアウト!
  相続財産が現金や無記名の公社債、家族名義の預貯金などの場合は、税務署には把握されまいと考えて申告漏れとなるケースが多い。ましてや、海外資産であった場合は申告除外する誘惑に負けそうである。だが、税務調査の網からはのがれられないようだ。今年6月までの1年間の相続税調査では、255件の海外関連事案の調査が実施され、うち197件から129億円に上る申告漏れ課税価格が把握された。
  国際化の中で海外の不動産などを購入することが珍しくなくなったことから、税務当局も常々情報収集には力を入れており、海外の資産だから申告しなくてもばれないだろうといった都合の良い考えは通用しないようだ。
  相続税の申告で疑われる典型パターンは、被相続人の生前の収入に比べ申告財産が少ないのではないかと想定されるケース。例えば、被相続人が元開業医だった事案がそうで、銀行調査によって外貨預金口座からハワイの公表外銀行に送金している事実が判明。さらに綿密な銀行調査が行われたところ、公表外のカリフォルニアやハワイ、国内金融機関の預貯金が申告漏れとなっていた。相続人は、相続開始後にそれらの預貯金を解約し、海外送金や名義変更などの隠ぺい工作を行い、申告除外していたことが明らかになっている。
参考:国税庁「相続税の申告事績(平成16・15年分)及び調査事績(平成16事務年度分)
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.12.26
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