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消費税申告の開始間近――赤字でも払わないといけない消費税
●  いよいよ消費税申告実務はじまる
  税理士事務所を経営していて最近特に質問が多いのは、消費税関連である。これは平成15年税制改正によって、消費税の納税義務基準及び簡易課税の適用基準が変更されたことによると思われる。
  具体的には平成16年4月1日以後に開始する課税期間から、事業者免税点制度の適用上限を1,000万円(以前までは3,000万円)に引き下げ、簡易課税制度の適用上限を5,000万円(同様2億円)に引き下げることになった。これにより、個人事業者の場合はいよいよ平成17年分の確定申告から適用されることになる。つまり、この改正により消費税の納税義務者となった方は、平成18年3月31日までに消費税の申告が必要ということになる。
  そこで今回は、これから初めて消費税申告を経験する方のために、消費税の計算の仕組みを解説する。
●  売上高5,000万円以下なら、有利な課税方式を選択
  消費税の計算方法は、「原則課税方式」と「簡易課税方式」の2つがある。まず「原則課税方式」は、読んで字のごとく原則通りの考え方をするので、「売上の際に顧客から預かった消費税」から、「仕入などの際に支払った消費税」を差し引いて計算することになる。会社としては、消費税はスルーするだけであるので損も得もないということになる。
  それに対して「簡易課税方式」とは、「売上の際に預かった消費税」から、「売上消費税に一定のみなし仕入れ率を掛けた金額を支払った消費税とみなして」、その差額を支払うというものである。つまり、実際支払った消費税というのは一切見ずに、売上高と業種ごとに異なるみなし仕入れ率(図1)をもとに支払うべき消費税を計算する方法である。計算は、「原則課税方式」に比べてかなり簡単になる。ただし簡易課税方式が選べるのは、2年前の売上高が5,000万円以下の場合に限られる。
【図1 みなし仕入率】
区分 業種 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業 80%
第3種事業 製造業・建設業・農業等 70%
第4種事業 その他の事業(飲食店業・金融保険業) 60%
第5種事業 不動産業・運輸通信業・サービス業(飲食店業を除く) 50%
●  消費税はなぜ赤字でも払わなければならないの?
  それでは、なぜ赤字でも消費税は払わないといけないのであろうか? これもよく質問を受ける。
  まず「原則課税方式」の場合から考えてみよう。例えば経費のうちで「給料」や「減価償却費」、「支払利息」などはその取引の中に消費税が含まれていない。ということは、その分支払った消費税がないことになるので、赤字であっても消費税が発生する場合が多い。
  また「簡易課税方式」の場合は、その計算の仕組みが売上高から計算することになるので、売上が0でない限り消費税が発生することになる。そのため、赤字でも消費税は払わないといけないのである(もちろん計算してみて払わなくていい場合もあるが・・・)。
(今村 仁 今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.01.05
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