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5名未満の事業所の賃金等の実態
●  女性の労働力が主力
  厚生労働省は毎月常用労働者の賃金や労働時間などの雇用の実態調査を行い、「勤労統計調査」として発表している。ただしこの調査は5名以上の事業所を対象にしているものである。今回、5名未満の事業所に働く常用労働者(短時間労働者を含む)の雇用の実態(2005年7月時点)が報告されたので、5名以上の事業所と比較しながら、零細事業所の雇用の現状を明らかにしたい。
  最初に常用労働者の内訳をみると、女性が56.6%であり、5名未満事業所は女性労働力によって支えられている。しかも2004年調査では55.5%であったことから女性の比率が高まりつつあることが分かる。女性の比率が高い業種は、飲食・宿泊業で73.0%、卸・小売業で60.0%、サービス業で58.2%、逆に少ないのが建設業で20.4%、製造業で42.1%である。また女性常用労働者の39.4%は短時間労働者である。
●  事業所規模による賃金格差が大きい
  具体的な雇用の実態のうち、まず残業などを除く月間の給与額は、平均で19万0,888円である。これは前年比0.9%の減少であり、5年連続で前年比マイナスとなっている。
  男女別では男性25万9,779円、女性が13万8,027円である。業種別では建設業が25万4,253円と高く、製造業21万6,167円、サービス業19万5,514円、卸・小売業18万5,438円と続き、最も低いのが飲食・宿泊業で11万8,105円となっている。
  一方、5名以上の事業所の月間の給与額は平均27万2,542円と、事業所規模により大きな格差がある。また対前年比で5年ぶりに0.2%増となっており、5名未満事業所が一段と厳しい状況であることが分かる。
  5名未満事業所での賞与総額は、年間22万0,764円で月数換算1.16月となっている。5名以上では72万9,204円であり、月間給与だけでなく賞与などでも大きな格差が存在している。
  年齢別の賃金カーブを見ると、年齢が高くなるほど賃金が上がるという一般的な傾向は見られる。男性は40歳前半まで上昇を続け、その後横這いとなる。女性は20歳代後半が最も賃金が高く、それ以降は横這いもしくは減少している。これにより男女の賃金は2倍近くの格差が見られる。
●  1日あたりの実労働時間は比較的短い
  月間の出勤日数は、21.1日である。業種別では建設業が最も多く22.2日、少ないのが飲食・宿泊業の19.9日である。ちなみに5名以上の事業所では出勤日数は19.9日であり、出勤日数においても規模による格差がある。
  1日あたりの実労働時間は7.2時間である(男性8.0、女性6.7時間)。やはり業種別では建設業が最も長く7.7時間、少ないのが飲食・宿泊業の6.3時間である。ちなみに5名以上の事業所では実労働時間は8.1時間であり、これに限っては5名未満事業所の方が労働環境は良いといえる。
【男女別年齢階級別月間賃金】
出所:厚生労働省「平成17年毎月勤労統計調査特別調査結果の概況」「毎月勤労統計調査(平成16年分結果確報)」「毎月勤労統計調査(平成17年7月分結果確報)」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.01.16
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