>  今週のトピックス >  No.1175
切り替えが進みつつある企業年金
●  厚生年金基金、適格退職年金の加入者は最盛期から半減
  今から5年前の2001年は、低金利による企業年金の運用利回りの低下と、それに追い討ちをかけた退職給付会計の導入を契機とした「企業年金大改革」の年だった。確定拠出年金法と確定給付企業年金法の成立、厚生年金基金の代行返上の開始が始まり、これまでの厚生年金基金と適格退職年金中心の企業年金から、確定給付企業年金と確定拠出年金中心に切り替わっていくはずだった。
  しかし、株高と景気回復によって企業年金の運用利回りが回復しているなか、厚生年金基金、適格退職年金から、確定拠出年金、確定給付企業年金へのバトンタッチは進んでいるのだろうか。
  最盛期には1,900件近かった厚生年金基金も、代行返上が進んだ現在(2006年1月1日時点)では、従来の基金の形態のまま存続しているのは669件と最盛期の3分の1に過ぎない。将来部分の返上を終えた基金は36件。将来部分だけでなく過去部分の返上も終えた基金が749件。これまで解散した基金が484件で最盛期の3割弱の件数にあたる(代行返上した後の解散も含む)。最盛期に1,200万人以上いた加入者数も、現在は約545万人と半減した。過去分を返上した749件の厚生年金基金のうち、737件は、確定給付企業年金に移行しており、確定給付企業年金1,382件の半分強を占めている。移行した737厚生年金基金のうち、586件は基金型の確定給付企業年金に移行している。
  一方、適格退職年金は、最盛期は9万2,467件だったが、2005年3月末現在では52,761件(2004年3月末では59,162件)と、最盛期の6割弱まで減少している。また最盛期には1,078万人だった加入者数も、現在は653万人と約4割減少している。
●  企業年金を失った従業員は587万人
  新しい企業年金である確定給付企業年金は、厚生年金基金からの移行を除いた新設の件数は645件である。確定給付企業年金制度の発足当時は、そのほとんどが厚生年金基金からの移行によるものだったが、ようやく新設数が移行数に近づいてきた。加入者数は2005年3月現在で314万人である。
  もう一つの新しい企業年金である企業型確定拠出年金は、昨年10月末現在で規約数は1,583件、企業数では5,333社が導入している。ちなみに加入者数は約157万人である(2005年9月末現在)。そのうち、1,125規約については、適格退職年金・厚生年金基金、退職一時金から資産を移換して発足している。
  また適格退職年金から中小企業退職金共済制度(以下、中退共)に資産が移換された件数は、昨年11月末で7,881事業所、加入者数は約22万人である。
  このように厚生年金基金は約655万人の減少、適格退職年金は約425万人の減少であり、合計1,080万人が従来の企業年金を失っている。それに対して確定給付企業年金は314万人、確定拠出年金は157万人、中退共が22万人と合計で493万人に過ぎず、差し引くと587万人は新たな企業年金を得られていない計算になる。ラフな計算ではあるが、企業年金を失った従業員が多くいるのは間違いない。
出所:企業年金基金連合会、厚生労働省「確定拠出年金連絡会議」、中小企業退職金共済事業本部
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.01.23
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