>  今週のトピックス >  No.1177
派遣と業務請負の区分をほんとうに理解できている?
●  偽装派遣を問題視
  東京労働局を中心として首都圏の各労働局の共催のもと昨年の10月、11月の2カ月間に「首都圏派遣・業務請負適正化キャンペーン」を実行した。そのキャンペーンの一環として「製造業における業務請負と労働者派遣についてのアンケート」を実施し、東京労働局は、昨年末にその結果をまとめ発表した。
  キャンペーン中には「派遣と請負の適正化を集中的に推進」し、数多くのセミナー開催を実行したり、ポスターやリーフレットによる関係法令の幅広い周知が行われた。このキャンペーンは請負等を偽装した労働者派遣が多く見られることを受けて行われていることはあきらかである。東京労働局もほかのさまざまな問題がある中で、この偽装派遣の問題解決にかなり力を入れていることが伺える。
●  派遣と請負の区分を 「十分理解している」のは、約34%
  キャンペーンの一環として行われた「製造業に関する業務請負と労働者派遣についてのアンケート調査票」は、首都圏の製造業に送付し、約2割(1,876社)の回答を得ることができた。それによると生産現場における派遣と請負の区分についての理解度は、「十分理解している」は34.2%にとどまっている。もちろん「ある程度理解している」の49.6%を含めると約8割超が理解しているということになるが、一方で「理解に不安がある」「理解に問題がある」などとしたところも16.2%あり、このような企業にどのような方法で指導していくのかは将来の課題である。
  生産現場においての業務請負についての活用状況に関するアンケートでは、「年間を通じて恒常的に活用」が35.2%、「必要に応じて活用」が16.8%と、5割以上の事業所が何らかの形で業務請負を利用していることになる。また製造業派遣が認められたこともあり、この1年で請負をやめたり発注していない事業所も10%以上あった。
●  期間延長後は、派遣の受け入れを増やす傾向へ
  物の製造業務についての派遣は、現在1年を限度としているが、平成19年3月には物の製造の業務についても最大3年間まで派遣期間が延長になり、より利用しやすくなる。実際のアンケートでも期間が3年になれば、派遣の受け入れを3割以上(従業員が300人以上の事業所では4割以上)の事業所が増やしたいと考えているようである。
  今回の結果を見る限りにおいては、製造業の派遣スタッフの受け入れとしてはまだ本格的とはいえない状況にあると窺われた。実際のところ現状は派遣と請負の区別がつかないような中で、無意識のうちに違法派遣が多数行われているに違いない。
  各企業の経営陣は、コンプライアンス重視の姿勢を表明しているが、肝心の製造現場の責任者が派遣と請負の区別ができていないことも多い。東京労働局などは、今後現場調査などもう一歩踏み込んだ対応をして偽装派遣の根本的原因を探り、問題を解決する必要があるのではないだろうか。
出所:東京労働局「製造業における業務請負と労働者派遣についての調査」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.01.23
前のページにもどる
ページトップへ