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豪雪被害は雑損控除か災害減免法で所得税を軽減
  気象庁の予報によると、今年の冬は1985年度の冬以来20年ぶりの厳しさとなる可能性がある。東北・北陸地方を中心に各地で記録的大雪に見舞われており、雪下ろしなどの除雪作業が人手不足ではかどらず、家屋に損害を受けることも少なくない。このような雪害などの災害によって、住宅や家財などに損害を受けたときは、確定申告すれば所得税を軽減することができる。
●  “雪下ろし”費用も雑損控除の対象に
  まず、雪害や地震、火災、風水害などの災害によって、住宅や家財などに損害を受けたときは、確定申告で(1)所得税法に定める雑損控除の方法、(2)災害減免法に定める税金の軽減免除による方法、のどちらか有利な方法で、所得税を軽減できる。ただし、雑損控除は、災害、盗難、横領による損失が対象だが、災害減免法は災害による損失に限られ、損害額が住宅や家財の価額の2分の1以上であることが必要になる。
  雑損控除の控除額の計算は、(1)差引損失額−所得金額の10分の1、(2)差引損失額のうち災害関連支出の金額−5万円、のうちいずれか多いほうの金額となる。差引損失金額は、損害金額から保険金などによって補てんされる金額を差し引いた金額。災害関連支出とは、災害により滅失した住宅、家財を除去するための費用や豪雪による家屋の倒壊を防ぐための屋根の“雪下ろし”費用なども含まれる。
  一方、災害減免法による所得税の軽減額は、その年の所得金額が(1)「500万円以下」は全額免除、(2)「500万円超750万円以下」は2分の1軽減、(3)「750万円超1,000万円以下」は4分の1が軽減される。原則として、損害を受けた年分の所得金額が1,000万円以下の人に限られる。また、災害減免法を適用するためには、「損失額の明細書」を確定申告書に添付することが必要だ。
●  予定納税の減額・源泉徴収の徴収猶予も可能
  雪害などの災害は、雑損控除や災害減免法によって所得税が軽減されるが、これらは翌年の確定申告によって精算される。一方、災害などが発生した後に納期限がくる予定納税や給与所得者の源泉所得税などについては、確定申告の前にその減額や徴収猶予などを受けることができる。また、災害などの理由によって申告、納付などをその期限までにできないときは、その理由がやんだ日から2カ月以内の範囲内でその期限が延長される。
  予定納税の減額は、所得税法では災害等を受けた日の区分によって、「1月1日〜6月30日」の場合は6月30日の現況によって、その年の所得金額と税額を見積もり、原則として7月15日までに第1期分及び第2期分の減額を、また、「7月1日〜10月31日」の場合は10月31日の現況によってその年の所得金額と税額を見積もり、原則として11月15日までに第2期分の減額をそれぞれ申請する。
  一方、災害減免法は、7月1日から12月31日までの間に災害を受けた場合で、(1)住宅や家財に受けた損害額がその価額の2分の1以上であること、(2)その年の所得金額の見積額が1,000万円以下であること、のいずれにも該当するときは、その年の所得金額と「所得税の軽減額の計算」による税額とを見積もり、災害のあった日から2カ月以内に予定納税の減額を申請する。
  また、上記の災害減免法の要件のいずれにも該当するときは、所得金額の見積額に応じて源泉所得税の徴収猶予や還付が受けられる。該当しない場合であっても、損害額がその年の所得金額の10分の1を超えるなど雑損控除の適用があると見込まれるときは、その雑損失の金額に対応する源泉所得税額が徴収猶予される。徴収猶予の手続きは、災害を受けた日以後、最初に給与の支払を受ける前日までに勤務先を経由して、申請書を所轄税務署長に提出する。
  なお、災害などにより財産に相当の損失を受けた場合、税務署長に申請することによって納税の猶予が受けられる。損失を受けた日に納期限がきていない国税で、損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税は納期限から1年以内、所得税の予定納税や法人税・消費税の中間申告分は確定申告書の提出期限まで、また、すでに納期限がきている国税で一時に納付できないと認められる国税は1年以内で、それぞれ納税猶予が受けられる。
参考:国税庁「暮らしの税情報「災害等にあったとき」
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.01.23
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