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2006年の投資信託市場の考察
●  投資信託市場の行方
  2005年末の投資信託を取り巻く環境は、いくつかの注目すべき出来事があった。銀行の投資窓販だけでなく、変額年金の運用ファンドとしても投資信託市場への資金流入が起こり、ITバブル期を大きく上回る活況を呈している。そこで、投資信託協会が公表しているいくつかのデータをもとに、2006年の投資信託市場について考える。
1.公募株式投信への資金流入続く
  公募投信信託※は、投資する有価証券に株式を組み入れることができる「公募株式投資信託(以下、公募株投)」と株式を一切組み入れることができない「公募公社債投資信託」に2分され、昨今の投資信託で話題となっている「毎月分配型ファンド」「チャイナ株」「BRICsファンド」「リス限定型ファンド」などはすべて公募株投に分類される。ではこの公募株投はどれくらい資金が純増(流入額から解約および償還額を差し引いたからもの)したかを示したのが次のグラフ1である。
【グラフ1:公募株式投信(全体)の資金純増額】
  2005年には、77,073億円とITバブル当時を大きく上回る資金純増が起こっていることがお分かりになるであろう。この資金流入額の内訳は、年金基金や金融機関の資金も含まれているが、個人投資家の資金も相当含まれている。つまり、2005年の投資市場は、近年になく大幅な資金純増となったということである。このことからも2005年は、投資信託市場にとっていかに追い風の年であったかが分かる。
2.公募株投における銀行の投信の純資産残高はどうなったのか?
  公募投信の市場を活況化させている要因の一つは、いわずと知れた銀行による投信窓販である。銀行は、1999年の窓販解禁以来、着実にその純資産残高を増加させている。では、2005年末時点での銀行の投信純資産残高の内訳はどうなったのであろうか。この数値を示したものが次のグラフ2である。
【グラフ2:銀行等の投信窓販残高の推移(1999年−2005年)】
  グラフ2では、銀行投信窓販の純資産残高がついに20兆円を突破したこと、またその20兆円のうち公募株投の比率は95%を上回り19兆9,000億円を上回っているという2点が注目すべき点といえる。つまり、銀行の投信窓販は、個人投資家を公募株投へ呼び込む大きな役割を果たしているといえる。
3.銀行投信窓販のシェアは
  公募株投に占める銀行窓販のシェアはどうなったのであろうか。それを示したのがグラフ3である。
【グラフ3:全体に占める銀行等による公募株式投信の純資産残高のシェア】
  銀行の窓販シェアは、2005年に一時50%を突破したが、年末時点では48.8%と50%にわずかに届かなかった。その理由は、グラフ3はあくまで投資信託の時価総額(純資産残高)をもとに算出されたシェアであるからであろう。つまり、純資産残高の場合、実際の販売額自体は伸びても、販売後にファンドが値下がりした場合などは、純資産残高も減少しその結果、シェアは低下することとなるからである。
  2005年は銀行が主力で販売している毎月分配型の海外債券ものはそれほど純資産額が上昇しなかった一方で、証券会社などが積極的に販売した国内株式ものは時価総額が大幅に増加したため、その分銀行窓販のシェアの伸びが相対的に鈍化したように見えていると考えられる。その点を考えれば、銀行の投信窓販の勢いは全く衰えていないと考えるべきであろう。
  現在の市場環境を考えれば、2006年も、投信市場への資金流入の勢いが衰える可能性は低く、その点では一層の「貯蓄から投資へ」の流れが加速するであろう。
※公募投資信託とは、不特定多数の投資家に販売される投資信託。これに対し、2名から49名までの投資家に限定して販売される投資信託を私募投資信託という。
データ出典:投資信託協会
2006.01.30
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