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外注費or給料、会社にとって得なのは?
●  人材登用を会計上で見てみよう
  新しく人材を必要とするとき、外注に発注するのか社員として雇い入れて給料を支払うかは、なんとも悩ましい問題ではないだろうか。どちらが会社にとって得なのか、メリット・デメリットにはどういったことがあるのか?
  会計上は、個人事業主に外注として発注する場合は「外注費」という処理になり、雇用関係を結んだ社員に支払う場合は「給料」という処理になる。しかしこの「外注費」か「給料」かという問題は、単に勘定科目が違うというような単純な話ではない。その形態の違いによって、会社における税金や社会保険料などが大きく異なるのだ。
●  外注費の5つのメリット
1.固定費の変動費化
  まずは「固定費の変動費化」。これは、「給料」という形態であると、不況で売上が下がっても基本的に会社としては支払い続けなければならない固定費となる。それに対して、外注費は一般的に変動費といわれ、仕事がなければ発注しないため、売上に連動している費用といえる。つまり、給料ではなく外注費として処理するということは、「固定費を変動費化」していることになるのだ。もちろん会社にとっては、固定費より変動費のほうがありがたい費用といえる。
2.仕事に対する責任感の強化
  次に「仕事に対する責任感の強化」であるが、得てして従業員という立場に長くいると仕事に対する緊張感が薄くなり、また責任感も欠如していく場合がある。それはほぼ固定の給料という形でお金をもらっていることに起因しているのかもしれない。それに対して外注先の個人事業主は、今ある仕事をいい加減にすると次に仕事をもらえない可能性があるので、「仕事に対する責任感が強い」場合が多い。しかし、これはあくまで一般論であって個々に見た場合は、さまざまである。
3.源泉事務の簡素化
  給料というのはご存じのとおり、その支給時に会社が源泉所得税を計算してそれを天引きして支給している。そして会社はその預かった源泉所得税は、原則給料支給の翌月10日までに納めないといけない。これを「源泉徴収事務」という。いわば、税務署が行う税金の徴収事務を会社が代わって(しかも無料で)しているということだ。これに対して、外注費であれば原則源泉事務は必要ない。これが3番目の「源泉事務の簡素化」という外注費で払うことによるメリットである。
4.社会保険料負担の軽減
  次に「社会保険料負担の軽減」であるが、これは会社が人を雇用すると社会保険料負担が発生して、従業員と会社で原則折半することになっている。社会保険料とは、将来の年金のための厚生年金保険料であったり、けがや病気をしたときの健康保険料であったりする。しかし外注費という形態であれば、会社は一切負担しなくていいのである。これは会社にとって、結構大きな負担軽減になるのではないだろうか。しかし、この社会保険料負担も考慮して外注費の値段が決められている場合もあるので、その場合には必ずしも費用負担において得とはいえない。
5.消費税の節税
  給料を外注費化することのメリットの最後として、「消費税の節税」がある。実はこれが最も大きなメリットではないかと思う。どういうことかというと、会社が払う消費税というのは、売上時に「預かった消費税」から、費用支払い時に「支払った消費税」の差額を納めるという形態を原則とっている。ということは、その会社が納める消費税を減らそうと思うと、「支払った消費税」を増やせばいいのである。給料はその支払い金額の中に消費税は含まれていないが、外注費の場合はその支払い金額の中に消費税が含まれていることになっている。ということは、外注費で処理できれば会社にとって「支払った消費税」が増えることになるのである。
  例えば、年間給料として支払っていた1,000万円の人件費を、今年から外注費に変更したとする。そうすると、1,000万円×5/105=約47万円が、消費税計算上「支払った消費税」に計上されるのである。つまり、給料を外注費に変更すると、この場合約47万円の消費税の節税が実現することになる。
●  外注費と認められるには厳しい条件が…
  ここまで見てくると(特に消費税の観点からは)、給料より外注費のほうがいいということになる。しかしなんでもかんでも外注費にすれば、税務署が認めてくれるかというとそうではない。というより、給料を外注費に変える場合は、非常に厳しい見方をすると考えておいたほうがいい。特に「社内外注費」などは、否認される場合が多い。消費税の節税を狙った「給料の外注費化」は、争いなどでその多くが負けていることを最後に付け加えておく。
(今村 仁 今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.02.06
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