>  今週のトピックス >  No.1185
労働時間規制を大幅緩和
〜一定基準の労働者を対象とした労基法改正を検討〜
●  労使双方ともに四面楚歌
  厚生労働省の学識経験者で構成する「今後の労働時間制度に関する研究会」(座長・諏訪康雄法大教授)は、1月27日、労働時間規制の抜本的な見直しを求める報告書を発表した。この報告書では、法定労働時間を超えて働いた場合に割増賃金を支払う規制の対象から、管理職手前の労働者も除外できるようにする新しい制度についてまとめられている。同研究会では、昨年4月から今後の労働時間制度全般について検討を行ってきたところであり今回の報告書は、最終ということでかなり具体的な形でまとめられている。
  厚生労働省ではこの報告を受け、労働政策審議会労働条件分科会において、今後の労働時間制度の在り方について検討する予定である。また厚生労働省は労働基準法を改正し、2007年に制定を目指す労働契約法に盛り込みたいところではあるが、労働時間規制を外す制度や残業代の割増率アップは、労使双方に受け入れがたい箇所も多数あり、何度も議論を重ねる形になりそうだ。
●  自律的な労働時間制度の創設
  自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者が選択できる新しい制度については、今回の報告書において最も重要な論点となっている。報告書によれば、一定の要件をすべて満たす労働者には、労働時間に関する規定を適用除外する制度を創設するとまとめられているが、専門家や労働組合などの間では、かなり反対意見も上がっているようである。
  その問題の一定の要件とは、(1)管理監督者手前の幹部候補者 (2)部下がいない「スタッフ職」や研究開発部門のチームリーダーのいずれかであり、なおかつ(1)「仕事の仕方や量、時間配分に裁量があること」 (2)「本人の同意があること」 (3)「週休2日相当の休みを取得できていること」 (4)「年俸制など成果で払われる賃金制度」の4つの要件をすべて満たしていることとしている。
  健康確保のための措置をたくさん講ずるほかにも、新しい自律的な労働時間制度の適正な運用を担保するため、現行の企画業務型裁量労働制と同様に、対象労働者からの苦情に対応するための措置を講ずることとしている。この際、苦情処理措置が実効性のあるものとなるよう、企画業務型裁量労働制の苦情処理措置の運用実態や問題点を踏まえて検討を加えていかなければならない。
  各企業が労働時間に関する規定を適用除外する制度を導入するには、従業員代表らでつくる労使委員会や労働組合の同意が必要としている。労働基準監督署の検査で健康診断が実施されていなかったり、要件を満たしていなかったりしたことが発覚した場合、企業に制度適用をやめさせることや罰則を科すことを提言しているが、実際の運用面でどの程度まできちんとできるのかは疑問も残る。
  労使が実質的に対等な立場で議論できるようにしなければ、今後さまざまな問題が発生してしまい、今後の各企業の経済活動にまで影響を与えてしまうこともあり得るのではないだろうか。
出所:「今後の労働時間制度に関する研究会」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.02.06
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