>  今週のトピックス >  No.1187
企業の福利厚生費負担は一段増
●  法定福利費は漸増
  企業が負担する福利厚生費等の2004年度実績をまとめた調査結果が、日本経団連から報告された。
  企業が従業員一人あたりについて負担する法定福利費(健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険等の会社負担分)は、月額で74,106円(2003年度は72,853円、2002年度は68,552円)、前年度比で1.7%の増加となった。
  一方、社宅や慶弔金など企業独自の福利厚生施策の費用である法定外福利費は、28,266円(2003年度は27,958円、2002年度は28,203円)で前年度比ほぼ横ばいである。
  また、退職一時金や企業年金掛金などの退職金費用は、80,499円と2003年度の92,037円、2002年度の87,283円から大きく減少している。企業年金の運用利回りが回復したことと、早期退職制度などが一段落したためである。
  これにより、福利厚生費(法定および法定外の合計)、退職金費用の合計は、182,871円となり、前年度比5.2%減となった。現金給与総額は578,054円であり、前年度比2.1%増となったため、現金給与に対する福利厚生費・退職金費用の割合は31.6%で、前年度より2.5ポイント低下した。
●  現金給与以外の人件費は倍増
  現金給与を100とした場合の法定福利費、法定外福利費、退職金費用の割合を時系列に追ったものが図表である。30年前の1973年度は、3つの費用を合計しても16%程度に過ぎなかった。
  社会保険の充実、少子・高齢化の進展とともに、社会保険料は増加を続け、73年度の現金給与に対する法定福利費の割合は5.9%だったが、今や12.8%と倍以上になっている。
  退職金費用は4.2%から13.9%と3倍増である。これは、勤続年数の長期化と給与の上昇により、退職金額が高騰した結果である。特に給与が伸び悩んだ90年代後半以降は、人員調整に伴う退職金支給も重なり、対現金給与割合は急速に高まった。
  それに対して法定外福利費は73年度の5.8%から4.9%へ減少している。法定福利費や退職金費用の増加による企業負担増のしわ寄せが、法定外福利費の抑制につながっている。
  結果として福利厚生費、退職金費用の合計額の現金給与に対する割合は、73年度の15.9%から2003年度は31.6%と倍になった。今後も年金、介護、医療とも社会保険料率の上昇が確実視されていることから、企業の総額人件費はますます圧迫されていくだろう。
【福利厚生費、退職金費用の現金給与に対する割合の推移】
出所:日本経団連「福利厚生費調査結果(2004年度)」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.02.13
前のページにもどる
ページトップへ