> 今週のトピックス > No.1189 |
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介護報酬の見直し案発表 その1 | ||||
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〜介護予防が崩壊しかねない事態に?〜 | ||||
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![]() ● ケアプラン単価を逓減制に
1月26日、この4月から適用される新たな介護報酬が発表された。事業所の指定基準見直しを含めて236ページにも及ぶ改定案は、官僚的な分かりにくい文章も相まって、読み解くだけでも相当な労力を必要とする。
この1週間で何とか内容を把握し、試算を重ねた結果、実は背筋が寒くなるような予測が浮かび上がってきた。さまざまな問題が散見される中で、介護保険制度を根底からくつがえしかねない点をまずは指摘しておきたい。 一番のポイントは、ケアプランの作成にかかる費用、つまり居宅介護支援の価格である。かねてからケアマネジャー1人あたりが抱えるプラン数の多さが、ケアマネジメントの質を落とすといわれ、担当件数を減らすための政策的な誘導が課題とされてきた。 そこで今回の見直し案では、ケアマネジャー1人あたりが担当するプラン数が増えるほど1件あたりの単価が安くなる逓減制が敷かれたのである。問題はその中身だ。見直し案では、1人39件以下ならば要介護1・2で1件あたり月10,000円、要介護3・4・5で月13,000円となっている(すべて標準地域における単価)。従来の居宅介護支援費が、要介護度に関係なく月8,500円であったから、単純に単価を比較すれば上昇している。 ところが、取り扱い件数が40件以上になると、途端に「要介護1・2で月6,000円、要介護3・4・5で月7,800円」となり、さらに1人60件以上になると「要介護1・2で4,000円、要介護3・4・5で5,200円」と半分以下にまで下がってしまう※1。 結局、最も収益を上げるためには、39件きっかりの数字を保たねばならない(そうでなければ1人130件以上という途方もない担当件数を担わなければならない)。現在、1人50件程度で何とか収支を保っている事業者が多い中で、一気に赤字へと転落するケースが続発するのは明らかだ。ほかに黒字の出せる併設サービスを持たない独立型事業所などは、ほとんどが事業継続は困難になるだろう。 地域から居宅介護支援事業所が消え、ケアマネジャー1人あたりのプラン件数が3分の2になれば、「介護保険を使いたくてもプランの作成ができない」事態を生みかねない。 ![]() ● 介護予防プランをもらえない要支援者が続出?
さらに深刻なのが、新たにスタートする介護予防サービスの対象者、つまり要支援1・2と認定された場合だ。介護予防のプランは地域包括支援センターという機関に所属する保健師が担当するが、保健師の配置基準は各センター1人なのでとても受けきれる量ではない(地域によっては1人の担当件数が数百件に及ぶと見られる)。そこで、アセスメントやプラン原案の作成については民間のケアマネジャーに依頼ができることになっている。
ところが、今回の見直し案では、民間のケアマネジャーが受けられる予防プラン数は1人8件までとされた。ただでさえ受け持てる件数が少ないのに加え、予防プランの単価は1件あたり月4,000円(新規のプラン作成では月6,500円)。予防プランの件数を全体の件数に算入させる場合、2分の1で計算できるとされているが(つまり、上限39件で設定する場合、要介護プラン35件+予防プラン8件となる ※2)、それでも予防プランを8件持つなら、要介護3・4・5のプランを4件持った方が増収できる計算になる。 そうなると、民間のケアマネジャーは積極的には予防プランの作成を受託しないことになる。そのまま保健師が1から抱えるとなれば、恐らくは業務量的にパンクしてしまうだろう。その結果どうなるか。要支援1・2と認定された人は「待てど暮らせどプランができないため、サービスを受けられない」という事態も考えられるのである。 要介護度を悪化させないための原則は、いかに早期に手を打つかにあることは言うまでもない。「待てど暮らせど」などという事態が生じれば、それは「介護予防を推進して、要介護者を減らす」という国の思惑とは180度異なる状況を生む恐れがある。制度崩壊の足音が近づきつつあるようだ。 ![]()
![]() (田中 元、医療・福祉ジャーナリスト)
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2006.02.13 |
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