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第三分野保険の積立水準監視の強化
●  保険料率の妥当性の不確実性
  民間生損保の第三分野保険が普及し、保険商品も多様化するにつれて保険料率自体の妥当性も課題となってきた。第三分野保険は、人口構造の変化や国の医療保険政策の影響も受けやすく、常に保険料率の適切性を検証する必要がある。そこで、金融庁では2005年の上半期に民間を交えた検討チームを設け、6月に検討結果をとりまとめた。
  今般、検討結果にもとづく保険業法の施行規則の改正案がまとまったので報告する。
  第三分野とは、医療保険、がん保険、介護保険など、疾病・傷害またはそれらの治療を事由として給付金が支払われる保険商品を指す。第三分野は、人口構造の変化や医療保険政策に影響されやすいにもかかわらず、終身保障タイプも多く、給付能力の確実性を問う声も上がっている。しかし、それに対して保険料算定の基礎率が各社まかせになっているのが現状である。
●  危険準備金の積み増し必要性の検証
  改正案では、@事後検証による保険料積立金の適切な積立水準の管理(すでに実施中)、Aストレステスト等による危険準備金の積立水準の確認、B当局における定期的なオフサイトモニタリングの実施、C基礎率変更権の実効性の確保、などを軸とした積立ルールを整備する。
  ストレステストとは、第三分野の保険商品ごとに、発売時に予測した保険事故の予測発生率と、発売後の実績発生率をもとにした今後10年間の発生率(危険発生率という)をもとに、保険料積立金が十分かどうかを検証する。予測発生率をもとにした保険料積立金水準が、危険発生率をもとにした水準を下回っていれば、危険準備金を積み増して対応する。
  これにより危険準備金の積立水準は、2段階になる。従来の危険準備金は「通常の予測範囲を超えるリスク」に対応するものであったが、第三分野保険については、「今後10年間に予測されるリスク」についても積み立てることになる。繰り返すが、これまでは「通常の予測範囲内のリスク」については保険料積立金で準備し、「通常の予測範囲を超えるリスク」は危険準備金で準備してきたが、今後は「通常の予測範囲を超えるリスク」は、過去のトレンドから「将来予測できるリスク」に対応する危険準備金と、「予測できないリスク」に対応する危険準備金の2種類となる。
●  ディスクローズの拡充
  こうしたストレステストの実施方法の詳細は各社に委ねられるが、その代わりにストレステストの実施方法と積立状況は、各社が開示する。また当局は、保険会社に対して定期的にモニタリングを行い、場合によっては対応をもとめていく。
  人口動態や医療保険政策の変化による第三分野商品のリスクの増大に対しては、基礎率の見直しを伴うこともあるが、実際には変更しにくいため、予め契約者に対して現状の予測発生率を開示の情報開示を徹底し、基礎率変更をしやすいまた理解を求めやすい環境を整備する。
  今般の施行規則の改正は、現在パブリックコメントを求めている段階である。
出所:金融庁「保険業法施行規則等の一部を改正する内閣府令案等の公表について(第三分野の責任準備金等ルール整備関係)
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.03.06
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