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国民年金保険料の未納対策がより活発に
●  社会保険庁のあせり?
  政府による国民年金保険料の未納対策が活発になってきた。国民年金保険料の納付率は、平成17年12月現在において64.5%(平成17年4月〜11月分)、対前年比で2.9%のプラスとなっている。また、過年度分の納付率(平成15年度分67.0%、平成16年度分65.6%)も平成16年度末と比較するとそれぞれ1.4%、2.0%の伸びを記録している。
  しかし、裏を返せばおよそ3割が未だに未納を続けており、早急な対策を求められていることに変わりはない。社会保険庁はこうした状況を受け、住民基本台帳ネットワークの情報を利用して毎年34歳の人の加入状況を総点検し、未加入者には必要な手続きを促したり、自営業者の同業組合・団体の希望に応じて国民年金法上の「保険料納付確認団体」に指定し、指定団体には構成員個々人の保険料納付状況を通知することなどを決めた。
  また政府は、今国会に提出する社会保険庁改革関連法案の原案に、国民健康保険証に有効期限を設ける「短期保険証」の発行を可能にする制度や特定業種について公的指定の更新を認めない制度の創設などを盛り込む方針である。
●  短期保険証の発行には、問題多発
  こうした制度創設の背景には、現在行っている未納者に対する強制徴収だけでは、未納・未加入の抑止効果は見込めず、納付率を平成19年度末までに80%に引き上げる目標の達成が困難との判断がある。
  国民健康保険証に有効期限を設ける「短期保険証」の発行は、国保の保険料を支払っているのにもかかわらず国民年金保険料は長年支払わない者が対象となる。国保の有効期限は通常2年程度であるが、これを3カ月の「短期保険証」に切り替える。
  また、公的指定の更新を認めない制度の対象となるのは、保険医や保険薬局、訪問看護事業者、介護保険事業者、介護保健施設、社会保険労務士の6業種で、再三の督促にも応じない悪質なケースが対象となる。
  6業種はいずれも社会保険制度に密接に関連するため、未納を続けることはより悪質性が高いとの判断による。これら制度以外にも、中小・零細企業の事業主らに対し、社員の保険料納付状況の情報提供を求め、納付を促す仕組みも盛り込んでいる。
  しかしながら、こうした制度創設に反対の意見も多い。「短期保険証」の発行については、
  国保の徴収は市町村が行っていることから「国保の納付率が下がる」などと市町村から反発される可能性がある。公的指定の更新を認めない制度では、特定職種のみに懲罰を与えるやり方は不平等であり、法的にも問題が多いとの意見がある。いずれにしても、各方面での調整が今後必要となるであろう。
●  未納対策には、根本的な問題解決をはかるべき
  国民年金保険料の未納問題は、年金制度の複雑さや将来もらえる年金額が把握しづらいことも一因にある。社会保険庁はこれらの対策として、年金見込額の簡易試算、年金を受け取る年齢になる直前に年金の請求書類などが送付されるサービス、若年者や学生の保険料の納付猶予や保険料を納めることが困難な場合の免除制度などを導入している。
  また、年金加入記録をネットで即時閲覧できるサービスの導入も予定している。しかし、こうした対策もまだまだ不十分な感は否めない。国民年金保険料の未納対策には、保険料徴収の強化と国民にとって分かりやすい制度、利用しやすい制度作りが重要である。
出所:社会保険庁 「国民年金保険料率について」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.03.06
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