>  今週のトピックス >  No.1206
日本企業の大型公募増資相次ぐ
●  全日空などが1,000億円規模
  新株を発行して資金を調達する「公募増資」に踏み切る日本企業が相次いでいる。今年に入って三井物産、全日本空輸、楽天が1,000億〜2,000億円規模の公募増資を発表した。しかも三井物産は16年ぶり、全日空は22年ぶり。久しぶりの巨額増資が相次ぐ背景には、好調な企業業績と株式市場の盛り上がりがある。
  公募増資は不特定多数の投資家を対象に新株を発行する資金調達手段。金融機関からの借入金は返済の必要があり、利子もかかるため財務・収益の両面で経営にマイナスの影響を与えるが、増資は無利子の資金を迅速に調達できる上、資本の増強で財務が安定するメリットがある。
●  株価急落のリスクも…
  一方、デメリットは株価が急落する恐れがあることだ。企業が増資すると発行する株式数が増える。その分一株当たりの価値は薄れ、これを毛嫌いする投資家が売り抜けようとするので株価が下がる。こうしたメカニズムで公募増資後に株価は下がることが多い。公募増資で使いみちのないような資金を大量に調達すると、それに見合った収益が期待できず株価は一気に急落することもある。
  1月31日に2,000億円強の公募増資を発表した三井物産はその後株価が下落し、3月上旬の時点で当時の水準から10%程度ほど安くなっている。全日本空輸は2月14日に公募増資で過去最高規模となる1,000億円強を調達すると発表。株価は翌日から下落し、3月上旬時点で10%強安くなった。楽天の株価も軟調だ。
●  株高の今がチャンス
  それでも各社大型の公募増資に踏み切ったのは、世界同時好況で今年は収益拡大のチャンスと見ているからだ。総合商社は資源高で業界を通じて好業績になりそう。資源権益の獲得や企業買収でさらに利益を拡大するために、三井物産は財務体質を強化する必要があった。全日空は有利子負債が1兆円を超え財務の改善が必要な中で、最新鋭の航空機への更新を進めており増資が必要だった。楽天は増資で調達した資金を米ネット広告会社の買収やTBS株取得で膨らんだ借入金の返済に充てる。
  だが、収益拡大や財務強化だけが公募増資ラッシュの理由ではない。最大の要因は、各社の株価がバブル期以降の低迷期を抜け、高水準で推移している点と、前述したように、公募増資のリスクは株価が急落してしまうところにある。だから三井物産も全日空も長年、公募増資がしたくてもできなかったのだ。このまま株高が続けば、今後も大型の公募増資を実行する日本企業が増えるに違いない。
2006.03.13
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