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日銀の量的緩和解除が及ぼす今後の影響とは?
  日本銀行は2006年3月9日金融政策決定会合において、01年から続いた量的緩和の解除を賛成多数で決定した。日銀の量的緩和の解除は、わが国の金融政策が大きな転換期を迎えたことを意味している。この背景には、日本経済が確実に回復していることが最大の理由といえる。そこで今回はこの量的緩和の解除とその解除による個人への影響について考える。
●  量的緩和の解除
  日銀は公的歩合による直接的な市中金利の誘導とは別に、銀行を通じ市中に出回る現金を調整する金融政策を行っている。一般的には日銀が市中に大量の資金が出回るようにすれば、銀行の融資額も増加し、企業の経済活動が活発化するといわれている。この政策は景気後退局面において取られる政策である。逆に市中に出回る資金の回収を行えば、金利の上昇により銀行の融資の減少が起こるといわれている。この政策は景気が上昇局面の時に取られる政策といえる。日銀は、長引く不景気や金融不安などを解消するため、市中に大量の現金を出回るような政策いわゆる量的緩和政策を約5年間にわたり継続してきた。
  しかし、先にも述べたように量的緩和を行うのは、景気後退局面であり、現在のように景気が確実に回復している状況下において、量的緩和を継続した場合には必要以上の現金が市中に出回ることになる。そしてそれら余剰な資金がやがて株式市場や不動産市場に流入すればバブルを引き起こす危険性があった。バブル経済を再び起こさないためにも、今回の量的緩和の解除は妥当な政策転換といえるであろう。では次に、今回の量的緩和解除によって、個人にはどのような影響が出てくるかについて考えてみる。
●  個人に与える影響
  まず、この解除によって、わたしたちの身近な金融商品に、金利上昇という目に見える形で影響が出てくるであろう。代表的な金融商品別にその具体的な影響とともにまとめると下表のようになる。
【金利上昇によって想定される代表的な金融商品とその影響】
  商品名 具体的な影響
個人にプラスの
影響がでる商品
銀行預金 金利が上昇し受取利息が増加
個人向け国債(変動10年) 金利が上昇し受取利息の増加
生命保険 予定利率が引き上げられる(定額個人年金・養老保険・変動利率年金保険などの受取額増加)
個人にマイナスの
影響がでる商品
一般的な債券
(固定金利型公社債)
債券価格の下落
変動金利型住宅ローン 支払い利息の上昇
●  変動金利型の住宅ローンには注意
  ここ数年は銀行がリテール部門の中核戦略商品に住宅ローンを位置付け、積極的に販売している。なかでも2〜3年程度の変動金利型の住宅ローンは、適用金利が1%台の前半と非常に低利であったため人気を集めているが、今後はそれらの住宅ローンの支払い利息が上昇するであろう。その結果、それらのローンをすでに組んだ個人は今後必然的に適用金利の上昇、そして支払い利息の増加が懸念される。場合によってはこの負担増に伴って、キャッシュフローの見直しが必要となる家庭もでてくるであろう。なぜなら、3年ほど前は日経平均株価も8,000円台と最も低迷しており、そのため景気回復に伴う金利上昇などを想像する雰囲気ではなく、その結果、変動金利型で低金利の住宅ローンを選択した個人も数多くいたからである。
  日銀や政府は、この量的緩和の解除が景気回復の足かせにならないように配慮していくとしており、急激に金利上昇する可能性は低いとはいえ、日銀が市中へ潤沢にしかも低金利で供給し、景気を回復させるという政策から、若干の金融引締めの政策へ展開しつつあることは事実である。いずれにせよ、この量的緩和解除は金融政策の転換点となる非常大きな出来事であり、今後は何らかの形で個人もその影響を受けることとなるであろう。
2006.03.27
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