>  今週のトピックス >  No.1217
子どものいる家庭の6割以上が子育てに負担感“大”
●  経済的負担より精神的負担
  財団法人こども未来財団は3月20日、「子育て家庭の経済状況に関する調査報告書」を発表した。この調査は、子育ての経済的側面に焦点を当て、子育て費用と意識面での経済的負担感の双方からの実態把握を目的として実施され、既婚の20〜44歳の男女を対象にWebアンケートにて行われた。
  今回の調査結果を通じて、多くの人々が、子育てに関し大きな負担感や不安感を感じていることがうかがえる。負担や不安の内容としては、経済的な理由よりも、精神的な負担を理由にあげる人が多い。この調査結果は子育てに対し、現在の社会環境がまだまだ不十分であることを示すとともに、どうすれば精神的な不安や負担を取り除くことができるのかを考える大きなヒントになっている。
  少子高齢社会の日本にとって子育て・出産については、一言ではいいあらわせないほどの複雑な問題があり、このような調査結果が今後の対策に活かされることを望みたいところである。
●  養育費に対する負担感は、所得の高低に格差なし
  アンケート結果を見てみると、子どもがいる家庭の65.3%が「子育てに負担を感じている」と回答している。負担に感じる事柄としては、「子どものしつけ・接し方」(32%)が「子どもの養育費(生活費・教育費)」(15%)を上回ってトップとなっており、意外にも経済的負担より精神的負担を強く感じているようだ。また「子育てにかかる体力的な負担」(11.2%)、「自分の自由に使える時間が少ないこと」(11.1%)も上位を占めており、社会や環境の変化、また価値観の多様性の影響と思われる理由も見受けられる。
  「子どもの養育費(生活費・教育費)」に対する負担感は、所得が200万円未満では4.9%、所得が1,000万円以上の家庭では20.3%という結果になっており、必ずしも所得の高低に影響しているわけではないようだ。これは、高所得家庭ほど子どもに高い学歴を求める傾向が強いためと考えられる。
  子どもを持つことや子どもを増やすことに関する質問には、子どものいない家庭の過半数が子どもを持つ予定であると答えており、子どもを持つことについては、比較的前向きな意見が多いようである。しかし、子どものいる家庭で子どもを持つ予定があると答えた割合は約2割だが、子どもが2人いる家庭に限定すると子どもを増やす予定があると答えた人は、7.2%まで減少してしまう。
●  家庭生活優先の環境に整える必要あり
  日本では、2005年より人口減少が始まっており、労働力人口にも大きな影響を及ぼすことが懸念されている。政府は、昨年4月から次世代育成支援対策推進法により、従業員301人以上の企業が子育て支援策の策定や届け出を義務付けるなど少子化対策に力を入れている。
  企業は、法定よりも長い育児休暇の導入や育児短時間勤務制度の期間延長、託児所の設置など子育て支援に力を入れはじめその割合も増加してきている。出生率の向上を促し、少子化や労働力人口減少を防ぐためには、まずは安心して子育てすることができる環境を作ることがはじめの一歩であるといえよう。
  政府と各企業は、一緒になって新しい働き方を考え、実態の伴った利用できる制度を構築していかなければならない。各個人が今よりも家庭生活を優先できる環境になれば、子育ての不安を少しは軽減できるのではないだろうか。
出所:財団法人こども未来財団「平成17年度子育て家庭の経済状況に関する調査研究」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.04.03
前のページにもどる
ページトップへ