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増税なしの財政再建は不可能との試算〜財政審
●  PB黒字化には26.9兆円の歳出削減必要
  財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が3月27日に公表した「財政の試算」によると、増税をせずに歳出削減だけで基礎的財政収支(プライマリーバランス:PB)を2011年度に均衡させるためには、2006年度予算に比べ歳出額を13.1兆円、国債費を除いたすべての経費を一律で18%削減、さらに2015年度にPBを黒字化させるためには同26.9兆円、32%削減しなければならないとの試算を示した。
  また、すべての経費を一律に削減せずに、社会保障・地方交付税等・人件費については削減幅を一定に抑えるケースでは、2011年度にPBを均衡させるためには公共事業費やそのほかの一般歳出を一律42%削減し、2015年度にPBを黒字化させるためには同68%削減する必要があるとの試算結果となった。
●  歳出削減が及ぼす国民生活への影響は大
  数字だけでは実感に乏しいが、「財政の試算」では歳出削減が国民生活に与える影響も示している。それは、すべての経費を一定率で削減した場合、2015年度の医療費の自己負担分は現在の約2.5倍となり、基礎年金の支給開始年齢も現在の65歳から6年遅れ71歳からとなるなどというもの。社会保障費等の削減幅を抑えるケースでは、2015年度の医療費は現在の約1.6倍、年金支給開始年齢も2年遅れの67歳からですむが、公共事業費やそのほかの一般歳出の削減が厳しいため、国家事業や行政サービスなどの低下が著しいことを指摘している。
  例えば、公共事業は現在の約3割(約2.2兆円)の水準まで減り、道路や空港などの新規事業は凍結される。また、公立大学の授業料は53万円から3.8倍の約203万円に急増し、治安面においても、警察車両(パトカー)の更新が遅延し、台数の減少や老朽化のため、現在通報後7分程度で到着したものが、2015年には30分程度へと大幅に遅れるなど、国民生活や国家機能へ大きな影響を及ぼすと予想している。
●  消費税で換算すれば2015年度は税率22%が必要
  仮に、上記の財政健全化に必要な財源を歳入増のみで賄うとすれば、それぞれ2011年度は27%程度、2015年度は45%程度の税収の増加が必要となるという。その額を仮に消費税率で換算すると、2011年度は6%程度(消費税率は11%になる)、2015年度は11%程度(同16%)の税率値上げに相当する。
  もっとも、この試算は、消費税率1%あたり2.2兆円(2006年度)として、税収増をすべて国に配分すると仮置きして機械的に計算したものなので、現在の国・地方の配分割合(56:44)を用いて試算すると、2011年度は10%程度(消費税率15%)、2015年度は17%程度(同22%)と税率の引き上げ幅が大きくなる。
  いずれにせよ、大幅な歳出削減を行うことは、国民生活や国家の機能等に大きな影響を及ぼすとの考えを示し、わが国財政の財政健全化に向けて、国家が果たすべき役割や国民が必要とする行政サービスの水準等を勘案しながら、歳出・歳入両面からの改革が必要だとして、消費税率の引上げなど増税の必要性を示唆している。
資料:財政制度等審議会財政制度分科会 http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/siryou/b41kai1.pdf
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.04.03
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