>  今週のトピックス >  No.1232
外形標準課税、赤字企業の納税1,680億円
●  外形標準課税の実績公表
  平成15年度税制改正によって平成16年4月1日以後開始事業年度より導入が開始された「外形標準課税」という新しい都道府県税(法人事業税)の実績が、総務省より発表された。その発表によると、平成17年3月期決算分として、外形標準課税適用企業の法人事業税額は全体で約1兆9,350億円。そのうち黒字企業の税額は約1兆7,670億円(うち外形標準課税分は約3,670億円)、赤字企業の税額は約1,680億円であった。
  外形標準課税が導入される前は、赤字企業には法人事業税が課されることはなかったので、この赤字企業の納税額である1,680億円が、外形標準課税が導入されることになって新たに税負担を求めることとなった税額ともいえる。
●  外形標準課税とは?
  外形標準課税を説明するには、まず法人事業税から説明することとなる。法人事業税のしくみは、利益(所得)に応じて課税される「所得割」と言われる部分と、給料や支払利子などから計算される「付加価値割」と言われる部分、そして資本等の金額に応じて課税される「資本割」と言われる3つの構成要素からなる。
  平成15年度税制改正前は、おおまかには前述の「所得割」のみによって法人事業税が計算されていた。つまり、その企業の決算において赤字であれば、原則法人事業税は課税されなかったのである。それが、税制改正によって、新たに「付加価値割」部分と「資本割」部分が追加された。そのことによって、赤字企業でも原則法人事業税が課税されることとなった。そして、この「付加価値割」部分と「資本割」部分が、一般的に「外形標準課税」と言われている。
  ただし、どんな企業でも外形標準課税が導入されたわけではない。電気、ガス、保険を除く資本金1億円超の企業のみが対象ということになっている。全企業数約300万社のうち対象企業数は約3万2,000社(約1%)といわれている。
  外形標準課税の導入理由は、「法人の事業規模に応じた税負担の公平性を確保し、安定的な行政サービスを提供するため」とされている。つまり、赤字であっても行政サービスの恩恵は黒字企業と同様に受けているので、たとえ赤字企業であっても一定の税負担をすべきであるとの考えが導入理由である。
  現在は資本金1億円超の企業が「外形標準課税」の対象となっているが、今後は、そのバーが下がることも予想されるので注意が必要である。
(今村 仁 今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.05.15
前のページにもどる
ページトップへ