>  今週のトピックス >  No.1234
交際費から除かれる5千円以下の飲食費
●  5千円を超えた場合は全額が交際費
  2006年度税制改正のなかで実務的に注目されるもののひとつは、法人が支出する飲食費が1人あたり5千円以下のものは交際費の範囲から除外され損金算入できることである。ただ、5千円以下という飲食は日常的にありうるだけに疑問点は多い。支出する相手は、法律に、役員や従業員、これらの親族に対する接待は除くと明記されており、あくまでも取引先など社外の者が対象となる。
  店を替えてはしごして接待した場合は、店ごとにかかった費用を人数で割って5千円以下であればいい。飲食費が5千円以下の判定は、実務的には領収書ごとに行うことになる。ここで注意したいのは、5千円以下にするために領収書を分割したり、参加した人数を水増ししたり、社内の者だけなのに取引先と飲んだなどと偽らないことだ。調査で判明すれば、仮装・隠ぺい行為として間違いなく重加算税の対象となる。
  また、1人あたりの飲食費が5千円を超えてしまった場合は、超えた部分だけでなく、全額が交際費となる。5千円という数字は基礎控除ではないわけだ。もっとも、5千円を超えたから即交際費というわけではない。飲食した実態をみて、交際費に該当するか、それ以外の会議費などに該当するか判断することになる。消費税は、その法人が税抜き処理であれば5,250円まで損金算入できる。経理処理次第となろう。
●  飲食の詳細を記載した書類の保存が重要
  もっとも重要なのは、その飲食費が損金算入できる要件を明らかにできる書類を作成・保存しておくことである。支払先からの領収書や請求書などの記載事項だけでは、参加者の人数や名称などが分からない。別途それらを記載した書類を作る必要がある。
  省令では、必要な記載事項について、(1)その飲食費等があった年月日、(2)その飲食費等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係ある者等の氏名または名称及びその関係、(3)その飲食費等に参加した者の数、(4)その費用の金額とその飲食店や料理店などの名称及び所在地、(5)その他参考となるべき事項、と明示している。
  (4)に関して、店舗がないこと(ケータリングサービスなどもOK)その他の理由により飲食店等の名称・所在地が分からないときは、領収書等に記載された支払先の氏名・名称、住所・居所・本店(主な事務所)の所在地を記載しておく。(1)や(4)については、領収書や請求書などに記載されているだろうが、(2)や(3)の参加者の人数や名前、事業との関連性などを含め記載した書類を、飲食費支出後なるべく早めに作成することが重要だ。
●  適用は4月1日以後開始する“事業年度”から
  この租税特別措置の適用は、2006年4月1日以後開始する事業年度からである。つまり、各企業の決算期の違いによって適用開始日が異なることになる。どうもこの点を誤解しているように見受けられる経営者が多いので注意したい。すべての企業が4月以降横並びで5千円以下の飲食費を損金算入できるわけではないのだ。
  4月1日以後開始する事業年度からの適用であるから、もっとも早いのは3月期決算の企業である。6月期決算であれば適用を7月まで待たねばならない。2月決算の企業は、来年の3月まで適用できないことになる。4月から来年の2月までの間に支出した1人あたり5千円以下の飲食費を損金算入とするために、法律が要求する規定に則った書類を作成・保存したとしても、この間の飲食費は従来どおり交際費である。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.05.15
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