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インターネットの私的利用、企業の半数以上がルール定めず
●  中小と大手で対応の差がくっきり
  民間調査機関の財団法人労務行政研究所は、「インターネット等の私的利用に関する実態調査」の結果を発表した。
  これによると、就業規則などでインターネット(ウェブサイト閲覧)や電子メールの私的使用についてルールを定めている企業は48.9%と半数に届かない。特に従業員300人未満の中小企業では32.7%と、3割強にとどまる。従業員1,000人以上の大手企業では72.4%がルールを定めていることと比較すると、中小企業では十分な対策が取れておらず、対応の遅れが気になるところだ。
  私的利用などに対して企業が行う防止対策のトップは、インターネット、電子メールとも「履歴の保存」が約4割。従業員のインターネットや電子メールの利用を監視・調査する「モニタリング」についても、インターネットでは21.0%、電子メールでは17.4%と2割前後が実施している。
  従業員によるインターネットや電子メールの私的利用や情報漏えいが問題となっているなか、各企業は従業員による不祥事を未然に防ぐとともに、早期にこれを発見し、適切な対応ができるよう取り組んでいることがうかがえる。
●  ルール違反には厳しい対応
  私的利用のルールを定めている企業における具体的内容を見てみると、ウェブサイト(ホームページ)閲覧については「私的利用を全面的に禁止」が79.4%と圧倒的多数を占めている。電子メールについては「私的利用を全面的に禁止」する企業が88.2%と9割近くにも上り、その逆に私的利用を認めるケースは1割程度と、ウェブサイト閲覧よりもルールが厳しい。
  ウェブ閲覧は内容に関して公私の区別がつきにくいため一律に厳しくできないのに対し、電子メールの場合はメールを使用して個人情報や機密情報が漏えいする危険があるため、こうした違いが生じているものと思われる。
  実際に不正使用があった場合の懲戒処分については、「けん責・注意処分」が最も多い。しかし「社内機密データの持ち出し・公開」については、過半数の51.7%の企業が「懲戒解雇」という最も厳しい処分を下すと回答している。さらに64.5%が直属上司にまで処分が及ぶとし、本人のみならず部下を指導する上司の管理責任まで問われている。この背景としては個人情報保護法や改正不正競争防止法の影響が考えられ、企業も厳しい姿勢で臨んでいることが分かる。
●  メールの徹底監視は、モチベーション低下につながる可能性も
  90年代からのインターネットの普及によって、情報収集や意思決定における利便性は飛躍的に向上した。一方、ウィニーなどのファイル交換ソフトによる個人情報や機密情報の漏えい問題などが生じており、インターネットの私的利用への対応は企業が取り組むべき重要課題の一つとなっている。
  しかしながらルールを定めた文書のある企業でも、拘束力が緩やかなマニュアルやマナー集の割合が比較的多く、就業規則で定めている割合に至っては11.8%と非常に低い。不正使用があった場合に懲戒処分を科すには、就業規則への記載が必要であり、併せて秘密保持契約書に盛り込むなどの対応も重要であろう。
  滋賀県では4月、入札情報が外部に漏れた不祥事が起きたため、職員が業者などに送信した電子メールを上司が毎日監視することにしたと発表した。県庁全体の送受信メールは1日当たり平均約1万5,000通とのこと。それをチェックしなければならない上司の負担はかなり大きい。
  同じような考え方で企業も部下のメールを上司が徹底監視することになると、社員のモチベーションを低下させてしまう可能性もある。状況に合わせて慎重に対応する必要があるだろう。
出所:財団法人労務行政研究所「インターネット等の私的利用に関する実態調査」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.05.29
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