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株式投信残高 バブル期を上回る
●  バブル経済ピークの年を抜く
  社団法人投資信託協会(以下、投信協会)は、今年4月末時点の株式投資信託の純資産残高が45兆5,459億円を突破し、過去最高を記録したことを発表した。
  それ以前の純資産残高のピークは1989年12月末で、45兆5,494円であった。1989年といえば言わずと知れたバブル経済真っただ中で、日経平均株価は38,915円、TOPIX(東証株価指数)が2884ポイントを記録した年だ。当時と現在の株価ならびに投信残高を比較したのが表1である。
【表1 バブル当時と現在の比較表】
  日経平均株価 TOPIX 株式投信純資産残高
  うち追加型
公募株式投資信
1989年12月当時 38,915円 2,884ポイント 45兆5,494億円 8兆4,915億円
2006年4月末現在 16,908円 1,725ポイント 45兆5,459億円 43兆7,402億円
●  要因は日本株式の価値増加ではない
  投資信託における「純資産残高」は、いわゆる時価総額のことである。純資産残高の増加要因としては、次の二つが考えられる。
(1)投資家の資金が流入し運用する資産自体が増加
(2)投資対象の財産額の価値が増加
  (2)の場合、たとえ投資家からの資金流入はゼロであっても、純資産残高も増加していくということになる。例えば日本株式に100%投資する投資信託のケースで考えると、投資した日本株の価値が倍増した場合、単純計算では純資産残高も倍増することになるのだ。
  その点を踏まえて再度表1を検証すると、日本の株式市場がバブル期の6割程度までしか回復していない状況において、株式投資信託の純資産残高がバブル期を上回った要因は、日本株式の価値増加によって株式投信の純資産残高が増加しためではないことが明らかであろう。
●  「銀行窓販」と「毎月分配型投信」の登場
  では、純資産残高をバブル期水準まで押し上げている要因はどのようなことであろうか。実は次の二つが考えられる。
要因1
公募株式投信を中心に、純資産残高が増加するもう一つの要因である「投資家の資金流入」が起こっている
要因2
株式投信が投資した有価証券のうち、日本株以外の有価証券(例えば海外債券など)の価値が増加している
  特にここ5〜6年間は、海外債券の資産価値が順調に増加したことに加え、それら海外債券へ投資する毎月分配型投信を銀行が販売し、急速に公募株式投信の販売額を伸ばしてきた。これによって、先に述べた要因1と2が同時に起こったわけである。
  具体的に、公募株式投信市場へどれくらい運用資金が流入しているかを示した「運用資金純増額(年間の設定額から解約、償還額を差し引いたもの)」の推移が表2である。
  投信の銀行窓販が解禁された1998年以降は常に運用資金が純増しており、特に2004年以降は、バブル期、ITバブル期を上回る高水準となっていることがよく分かるだろう。
【表2 公募株式投信における運用資金純増額(単位:億円)】
1989年 1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年
22,132 2,366 ▲64,375 ▲39,513 ▲23,744 ▲24,243 ▲26,417 ▲11,899 ▲7,923
1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年(※)
25,416 5,608 39,385 29,582 38,948 26,947 49,435 77,183 47,992
2006年は4月末までの数値の合算額
  つまりバブル経済時代にはなかった「銀行窓販」と「毎月分配型投信」という新しい出来事が、株式投信の純資産残高が純資産残高をバブル期水準まで回復させたわけである。
  言い換えれば、特に銀行とだけ取引をしていた客層が、「銀行窓販」と「毎月分配型投信」をきっかけとして投信を購入し、その結果が目に見える形で現れてきたものといえる。「資産運用に関しては保守的で、もっぱら元本が保障された預貯金で行う」と思われていた日本人の資産運用スタイルが、すでに大きく変化しつつあることの表れかもしれない。
  銀行窓販開始当時、こんな予想がよく唱えられていた。「日本でも今後はアメリカやドイツのように、投資信託市場は個人金融資産1,400兆円の10%、つまり140兆円程度まで成長するだろう」。もはや、これも十分実現の可能性が出てきたといえるのではないだろうか。
出所:投資信託協会ホームページ
2006.06.05
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