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合計特殊出生率、過去最低の1.25に
●  働き方の見直しと、子育て支援を求める声大きく
  厚生労働省が6月1日に発表した2005年人口動態統計によると、一人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.25で、前年の過去最低の1.29からさらに0.04ポイントも低下し、過去最低を更新した。
  日本の合計特殊出生率は 1975年に2.00を下回って以来、低下を続けている。1989年には「1.57ショック」と呼ばれる戦後最低の数値を記録した。このころから「少子化」が社会問題として認識されるようなったのである。政府は1994年の「エンゼルプラン」策定以降、さまざまな少子化対策を打ち出してきたが、出生率の低下には歯止めがかかっていない。
  政府の少子化社会対策推進専門委員会に参加した民間有識者委員は先月、猪口邦子少子化担当大臣による資料に同委員会の報告書が反映されていないとして、抗議声明を発表した。
  猪口大臣が経済財政諮問会議に示した案は、「出産無料化」や「乳幼児手当の創設」など経済的支援に力を入れている。それに対し専門委員は「働き方の見直し」や「地域・家庭の子育て支援」にまず取り組むべきという考え方だ。こうした環境整備を重視する案に共感する声も多く、今後どのような方向で対策を進めていくのか注目していきたい。
●  人口が初めて減少に
  人口動態統計によると2005年の出生数は106 万2,604 人で、前年の111 万721 人より4 万8117 人減少した。合計特殊出生率が1.29 から1.25 に低下し、15〜49 歳の女子人口は2,777 万人から2,753 万人に減少、出生率の高い25〜34 歳女子人口の割合も32.2%から31.9%に低下した。
  一方、死亡数は108万4,012人で5万5,410人増加している。出生数と死亡数の差である自然増数は2万1,408人減で、統計を始めた1899年以来、統計のない1944 年から1946 年を除き、初めて人口が減少に転じた。出生数が死亡数を下回った県は、前年は25 道県であったが、2005年は36 道府県となった。
  都道府県別にみると、合計特殊出生率が高いのは沖縄県(1.71)、福井県(1.47)、宮崎県(1.46)、福島県(1.46)など。低いのは東京都(0.98)、奈良県(1.12)、京都府(1.13)、北海道(1.13)など、大都市を含む地域であった。特に東京都の0.98は全国最低となっており、今後の対策が必要な重点地域といえるであろう。
  同統計によると婚姻件数は71万4,261 組で、前年の72 万417組より6,156 組減少している。平均初婚年齢は夫、妻ともに上昇傾向となっており、2005年は夫29.8 歳、妻28.0 歳で夫、妻ともに前年より0.2 歳上昇している。
  政府が年金改革の前提としているのは、「合計特殊出生率は2007年に1.306で底を打ち、その後1.39まで回復する」という2002年の人口推計である。しかしこれも崩れており、制度を維持していくためには再検討が必要になるだろう。
  小手先だけの対策では、もはや限界であることは立証されている。少子化問題は、国を挙げて取り組まなければならない最優先課題であることは間違いないようである。
出所:平成17年 人口動態統計月報年計(概数)の概況
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.06.12
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