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新規課税事業者への調査、6月は本格化
●  6月は定期異動前のノルマをこなす時期
  突然だが、税務職員の定期異動の時期をご存じだろうか。国税職員の定期異動は7月10日と法律で決められている。国税職員は2〜3年で異動するので、部門のメンバーは半分くらい入れ替わる。異動する職員にとって、6月は定期異動前のノルマをこなす大切な時期となり、必然的に調査も本格化する。
  今年は消費税の免税点引き下げによって多くの新規課税事業者が初申告を行っただけに、所得税部門の職員にとっては「申告義務がありながら無申告だった者はいないか」といった実態把握が最重要の課題となっている。
  国税庁が公表した2005年分消費税の個人事業者の確定申告状況によると、新規課税事業者117万4千人が申告書を提出した。この数は、国税庁が見込んでいた新規課税事業者数122万人の約96%にとどまる。
  課税事業者かどうかを判定する基準は2年前の2003年分の課税売上高だ。国税庁は昨年12月時点で、2003年分の申告に基づき、あらかじめ新規課税事業者の人数を見込んでいた。2年前の課税売上高が1,000万円を超えていたにもかかわらず、今年は無申告だった約4万社については実態把握が必要になる。
●  課税事業者の判断を勘違いしたケース
  個人事業者の中には、2005年分から免税点が1,000万円に引き下げられたことは承知していても、課税事業者かどうかを判断するのは2年前の基準期間であることを分かっていないケースが少なくないとみられている。
  例えば、基準期間の2003年分に課税売上高が1,000万円以上ありながら、2005年分は1,000万円以下だったため、「新規課税事業者には当たらない」と勘違いして申告しなかったケースだ。
  国税庁では現在、無申告だった約4万人に対して文書や電話などで接触して実態把握に努めている。応じない事業者に対しては実地調査に着手しているところもあり、今後調査が本格化することは間違いない。
●  調査前なら、無申告加算税は5%に軽減
  実地調査で仮に「無申告」と判定された場合は、本来の納税額に加えて15%の無申告加算税が上乗せされる。さらに消費税の納期限の3月31日を過ぎると、4月1日以降から完納日までは年14.6%の延滞税も課される。
  調査前であれば無申告加算税は5%に軽減される。無駄な税金を払わないためにも、また上記のような勘違いを防ぐためにも、2003年分の申告内容を再チェックしてほしい。2003年分の課税売上高が1,000万円を超えていれば、今年の確定申告は新規課税事業者として消費税の申告が必要だったことになる。
  申告が必要だったことに気付いた場合は、早めに顧問税理士や税務署に相談することをお勧めしたい。今年は公示制度が廃止となったことから、調査などに投入する人員が例年よりも余裕がありそうだ。該当しそうな個人事業者は、税務署によって調査される前に、早めの再確認が必要だろう。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.06.12
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