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新会社法で自己株式の活用が容易に
●  新会社法の重要点
  平成18年5月1日より、新しい会社法が施行された。これは商法第2編・有限会社法・株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律等の各規定を再編集したものである。 最低資本金規制(※1)は撤廃され、そのうえで有限会社制度を廃止(※2)し、会社組織は株式会社制度に一本化された。
  ただし会社の内部関係について組合的規律が適用される合同会社(LLC=Limited Liability Company)という新たな会社制度が別途設けられた。会社設立についても、機関設計の柔軟化(※3)や類似商号規制の撤廃などが定められ、起業を後押しする内容といえる。ほかにも会計参与制度の導入や組織再編制度の整備、株式制度の改善(種類株式の拡充)なども行われた。
  経営者にとっては影響の大きい今回の会社法であるが、その中でも自己株式(金庫株)の取得について詳しく説明しておきたい。今まで以上に自己株式が利用しやすいものとなったからだ。
  ちなみに自己株式の取得とは、自社が発行する株式を現株主から自社が買い取ることをいう。
●  自己株式の取得は「いつでも、何度でも、だれからでも」
  以前だと自己株式の取得は、定時株主総会による承認に限定されていたが、新しい会社法においては臨時株主総会の承認でもよいこととなった。また従来は会社に株式を売却する譲渡人をあらかじめ指定しておく必要があったが、今回の改正によって会社が自己株式を取得できる新しい方法が創設された。
  つまり、自己株式の取得が「いつでも、何度でも、だれからでも」可能になったのだ。
●  自己株式取得のメリット
  それでは、どういったときに自己株式の取得が有効かを考えてみよう。
  まず思いつくのが事業承継対策だ。例えば、相続税を払えない事業承継相続人などから会社が自己株式を買い取ることによって、会社のお金を相続人に移転することができ、結果相続税の納税に充てることができる。
  分散した株式も、定款自治などを使って会社が買い取ることが可能だ。これは株式分散対策、すなわち経営権確保対策といえる。
  この自己株式を相続時に活用すれば、税制上優遇される。例を挙げて説明しよう。
  通常、売却した株主の税金計算では「みなし配当課税」となって最高50%の税率がかかる可能性がある。しかし相続で取得等した非上場株式を相続税の申告期限後3年以内に発行会社に譲渡した場合には「譲渡所得課税」となり、税率が20%に軽減されるのである。
  また「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」も利用できる場合は、税負担がさらに下がることになる。
●  活用のポイント
  ここで見てきたように、自己株式の取得は特に中小企業の事業承継面において有効といえる。ただし、以下の点については事前に十分考慮しておきたい。
・自己株式買い取り後の株主構成
・自己株式買い取りのための財源
・財源規制(分配可能額の範囲内)
・買取価格(法人税法上の時価への配慮)
※1 有限会社300万円、株式会社1,000万円
※2 既存の有限会社は存続可能
※3 取締役1人でも良いなど
(今村 仁 今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.06.19
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