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中小企業の世代交代を支援 「事業承継ガイドライン」
●  事業承継はこの10年が山場
  中小企業の事業承継問題を支援する団体「事業承継協議会」(事務局・独立行政法人中小企業基盤整備機構内)は6月14日、「事業承継ガイドライン」を公表した。
  それによると、日本経済を根底で支えているといわれる中小企業では高齢化が進む一方、後継者が決まっている企業は全体の約4割にとどまっている。このままでは経済全体に与える影響が大きくなるため、まさに「中小企業の事業承継問題は重要な課題」と位置付けている。
  中小企業社長の平均年齢が58.5歳であり、また中小企業の経営者自身が考える引退予想年齢の平均が67歳であることを考えると、今後10年間が中小企業の事業承継問題の山場といえる
  一般に中小企業は同族会社であることから、後継者はどうしても創業者一族との関係の中で見つけていくことになる。その理由として「事業承継ガイドライン」は以下の二つを挙げている。
  1. 同族会社では後継者となるべき候補が多く存在しているわけではないので、現実には親族外に該当者が見当たらない。
  2. 中小同族会社は多くの場合、社長が個人財産を事業のために提供していたり、逆に銀行との関係で個人保証を提供していたりするために、一族の財産が企業経営の中に組み込まれており、構造的に後継者は親族内から選択せざるを得ない。
●  会社法を活用する
  このガイドラインにおいて、「会社法の活用」という項目に注目してみよう。
  まず、株式分散防止のために「譲渡制限規定」の必要性が述べられている。会社法では株式譲渡制限会社について議決権制限株式の発行が行いやすくなっているなど、さまざまなメリットがある。
  ほかにも、種類株式の活用として「議決権制限株式の活用」や、「拒否権付種類株式(いわゆる黄金株)の利用」なども挙げている。議決権制限株式については、以前はその発行限度が発行済株式総数の1/2までと制限されていたが、会社法施行により発行限度枠が撤廃されて自由度が高まり、事業承継対策に活用しやすくなった。
  いわゆる「黄金株」については、元経営者が保有しておくことによって後継者の経営をけん制するといった利用法が考えられる。定款自治が認められるようになったことを生かして「相続人に対する売渡請求」を利用することも重要であると説明している。
  ガイドラインの最後には事業承継に関するチェックリストが4種類添付されている。すぐに活用できる内容なので、関心のある方はぜひチェックしていただきたい。
「事業承継ガイドライン」に掲載。出典は帝国データバンク、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの各調査。
出所:事業承継協議会「事業承継ガイドライン」
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.06.26
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