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損金算入の落とし穴に注意  国税庁「役員給与に関するQ&A」
●  役員賞与の損金算入を認める「事前確定届出給与」
  2006年度税制改正では法人の役員給与に関して大幅な見直しが行われた。これまで損金不算入とされていた役員賞与は、一定の要件に該当するものであれば損金算入が認められることになり、経営者や実務家の注目を集めている。しかし取り扱いに当たっては疑問点も少なくない。
  そこで国税庁は改正内容を周知するため、これまでに寄せられた主な質問に対する回答をQ&A形式にまとめて公表した。
  これは、役員給与の損金算入に関する制度の基本的な概要の説明から始まり、(1)定期同額給与、(2)事前確定届出給与、(3)利益連動給与の3支給形態について、それぞれ疑問に答えている。
  「定期同額給与」とは月給であり、「利益連動給与」は同族会社以外の法人に適用されるものである。なかでも疑問点が多く寄せられるのは、従来損金不算入とされていた役員賞与の損金算入を認める根拠となる、(2)の「事前確定届出給与」だ。
  事前確定届出給与とは、次のように定義されている。
  「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、その給与に係る職務の執行を開始する日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日までに、所轄税務署長にその定めの内容に関する事項を記載した届出をしているもの」
●  「職務執行開始日」は「定時株主総会の開催日」
  この定義で特に分かりづらいのは「その給与に係る職務の執行を開始する日」はいつを指すのかということである。Q&Aでは「会社法においては、役員の選任や職務執行の対価の決定が株主総会の決議により行われることなどと規定されていることから、役員給与は定時総会から次の定時総会までの間の職務執行の対価と解するのが相当」と説明。事前確定届出給与も役員の職務執行の対価であることは変わりがないから、一般的には職務執行を開始する日とは、定時株主総会の開催日ということになるとの解釈を示している。
  ただし実務上、例えば月末に定時株主総会を開催し、翌月初めから開始する職務に対して役員給与を定めるケースも多いことから、「職務の執行を開始する日」を定時株主総会の日以外と定めた場合であっても、その日が株主総会の翌月初であり、かつ、定時株主総会の日に近接する日であれば、税務上も、企業実務の観点から是認しうるものであるとの考えを示している。
●  事前確定届出給与の定めは慎重に
  こうした考え方からすると、事前確定届出給与は、これから開始される事業年度の職務に対応して支払われる役員給与について認められることになる。
  一部の実務家の間では、例えば3月決算法人が経過措置により6月末までに税務署に事前届出をすれば、7月支給の役員賞与の損金算入が認められると思われているようだ。しかしこのケースでは前年の株主総会で7月に確定額を支給する旨の定めがない限り、認められる公算は少ないだろう。
  従ってこれまで役員賞与を支払う慣行がなかった3月決算の企業が新たに役員賞与を支給しようとするケースでは、7月支給分の役員賞与相当額は毎月の給与に12等分して均等に上乗せして、定期同額給与として支給したほうが無難である。損金算入できる役員賞与は12月支給分からとなる。
  事前確定届出給与は、これまで損金不算入だった役員賞与の損金算入が認められるものであることから注目が集まっているが、意外に落とし穴が多い。例えば実際の支給額が届け出ていた確定額と違う場合は、多くても少なくても全額が損金不算入とされてしまう。一方、定期同額給与は、増額・減額してもその後の毎月の支給額が同額であれば構わない。
  事前確定届出給与の決定には慎重な対応が求められる。
出所:国税庁「役員給与に関するQ&A」
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.06.26
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