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消費税、簡易課税方式で節税対策
●  簡易課税方式とは
  消費税の計算方法には、「原則課税方式(預かった消費税から支払った消費税を差し引いた残りを納税する方式)」のほかに「簡易課税方式」がある。この制度は、2年前の売上高が5,000万円以下の場合に適用が認められる(※1)。今回はこれを用いた節税対策を考えてみたい。
  簡易課税方式においては、売上消費税に一定のみなし仕入率を掛けた金額を「支払った消費税」とみなし、これを「売上の際に預かった消費税」から差し引いて納税額を求める。
  つまり、実際に支払った消費税は一切見ずに、「売上高」と業種ごとに異なる「みなし仕入率」をもとに支払うべき消費税を計算する方法だ。原則課税方式に比べてかなり簡単な計算といえる。
  「売上高」と「みなし仕入率」で納付税額が決定するのであるから、具体的には「売上高を少なくなるように」、そして「みなし仕入率が高くなるように」すれば、節税となるのである。
●  売上高を少なくする
  「売上高を少なくなるようにする」とは、例えばビジネスモデルそのものを「手数料を中心とした取引形態」に変えてみるということである。
  何かを仕入れて売っていても手数料程度の収入しかなく、実際それを手数料売上として扱うことに問題がない場合は、このような変更ができる可能性がある。ただし、実態として商品が自社を通じて売り先に渡っているときには手数料売上にできない場合があるので、念のため注意してほしい。
  ほかにも節税対策はある。得意先から売上の入金がある際に、手数料が引かれる場合があるだろう。その手数料を「売上の値引き」と考えて処理すれば、その分売上高を少なく計上できる。逆に仕入先からの販売奨励金などについては、収入でなく「仕入の値引き」と処理すると、余分な売上を計上しなくてすむ。
●  みなし仕入率を有利に分けて節税
  次に、「みなし仕入率」の活用で消費税の節税が可能かどうか考えてみたい。
  みなし仕入率は、業種ごとに決まっている。当然、仕入割合が高いと考えられる業種ほど、高いみなし仕入率になっている。高いみなし仕入率に該当すれば、その分支払った消費税を多く計算できるのであるから、結果的に有利になる。一般的に考えて、単独の業種のみを扱う会社というのは少ないであろうから、みなし仕入率も原則としてそれぞれの業種別に計算する。
  そこで、「卸売業(みなし仕入率90%)」と「小売業(みなし仕入率80%)」の違いをみてみよう。消費税法上では「仕入れてきた商品を形状など変えずに『事業者』に対して売るのが卸売業」で、「『一般消費者』に売るのが小売業」となっている。
  だが、表向きは小売業であっても、実際は事業者(※2)に販売している例も結構あるのではないだろうか。これをきちんと分ければ、その分は「卸売業」として一番有利なみなし仕入率を使うことができるわけである。
  こういったケースで余分な消費税を支払っている会社をよく見かけるので、留意されたい。
●  75%ルールを使う
  今みたように、業種ごとにみなし仕入率を区分けするというのが原則ではあるが、特例もある。
  それは、「一つの業種が75%以上の課税売上高を占める場合には、他の業種にもそのみなし仕入率を適用することができる」というものだ。
  例えばみなし仕入率第3種(70%)である製造業が、副業として第5種(50%)の不動産経営を行っており、その売上高は全体の2割くらいとする。この場合、第3種である製造業が全体の75%以上の売上高を占めていることになるから、第5種の売上も含め、すべての売上について第3種のみなし仕入率を用いて消費税を計算することができるのである。
  このみなし仕入率の特例を上手に利用すれば、効果的な節税が可能になる。
※1 事前に届け出が必要
※2 事業者とは、会社すべてと個人事業者を指す
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.07.10
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