>  今週のトピックス >  No.1266
来年度税制改正の焦点「サラリーマン増税」が浮上
●  消費税アップの前に、個人所得課税強化
  財政再建のための増収策の中心は、消費税率の引き上げである。当初、実施時期は小泉政権終了後の2007年度とみられていたが、どうやら大幅に遅れそうだ。自民党の中川秀直政調会長は「2009年度までに行う可能性が高い」との見通しを示している。
  代わりに浮上してきたのが、個人所得課税の抜本的な見直しである。世論を一時騒がせた、いわゆる「サラリーマン増税」だ。
  政府税制調査会が昨年6月に公表した報告書「個人所得課税に関する論点整理」が、「中長期的な検討課題」としながらも、所得区分や各種所得控除の見直し、納税者番号制度の検討など個人所得課税を強化する方向性を示したことで、マスコミが「サラリーマン増税」と一斉に集中砲火を浴びせたのは記憶に新しい。
  そのときに定率減税の廃止が決まったのだが、ほか多くの項目は消費税率引き上げ後に検討されるものと思われていた。消費税率引き上げと個人所得課税強化が同時では、いくら財政再建のためとはいえ国民の納得は得られない。
  ところが消費税率引き上げのスケジュールが遅くなったことから、それに先行していよいよ個人所得課税の本格的な見直しを検討することになった模様だ。
●  各種控除・税率・所得区分の見直しポイント
  6月末に政府税制調査会が開いた会合において、資産課税や納税環境整備とともに、個人所得課税についてこれまでの審議などを踏まえた主な論点が整理された。
  石弘光会長は記者会見で「所得課税は控除・税率・所得区分の見直しを通じて、実効税率のカーブがどうなっていくかがポイントになる」と語った。扶養控除や配偶者控除など人的控除の見直しのほか、勤務費用の概算控除としては手厚すぎるとの批判が強い給与所得控除などにメスが入れられる見通しである。
○  各種控除
  人的控除はできる限り簡素化することを基本とし、家族に関する控除などは基礎控除などに集約化する方向である。扶養控除の適用対象からニートやフリーターを除外することや、扶養控除などに代えて子育てを政策的に支援する税額控除の導入も検討する。給与所得控除については、被用者特有の事情を画一的にとらえて一律の控除を行う従来の仕組みを見直し、経費が適切に反映されるような柔軟な仕組みとすべきとの意見が強い。
○  税率構造
  税率構造においては、現行の税率の刻み数(6段階)を簡素化して極力減らすことや、税の公平性と所得再配分機能を高めるため、国税と地方税を合わせた最高税率を現行の50%から引き上げることが検討課題となる。しかし最高税率の引き上げに際しては「勤労意欲や事業意欲を損なう」との批判もあり、慎重に検討する考えだ。
○  個人住民税・所得課税
  個人住民税は、比例税率化によって、住民が地域社会の費用を広く分担する性格がより明確となった。従って人的控除をはじめとした各種の所得控除については、所得税からは独立して整理合理化を図る。均等割の税率は現在低い水準にとどまっているとされ、その引き上げが検討される。個人住民税の現年課税の可能性についても議論があるだろう。
  所得課税については、所得発生時点と税負担時点をできるだけ近づけるほうが望ましいとの考えだ。
  政府税調は今秋にまとめる中期答申に、個人所得課税の見直し案を盛り込む考えだ。だがすでに定率減税の2007年廃止が決まっており、給与所得者のさらなる負担増につながることから、再び「サラリーマン増税」に対する批判が一斉に火を噴きそうだ。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.07.10
前のページにもどる
ページトップへ