>  今週のトピックス >  No.1267
家庭と仕事の両立制度、利用しやすい雰囲気が課題
●  育児支援・介護支援制度はほとんど導入済み
  次世代育成支援対策推進法への対応や「ワーク・ライフ・バランス」に優れた職場環境を実現するために、家庭と仕事の両立を支援する制度の導入が急がれている。厚生労働省は2005年10月現在で企業による制度導入状況を取りまとめ、報告した。
  育児支援・介護支援とも、制度の実施率そのものはかなり高い。
  まず育児支援については、回答企業全体の98.2%が何らかの制度を導入している。うち育児短時間勤務制度は86.8%と大多数の企業で取り入れられている。法定を上回る育児休業制度を持つ企業は、49.1%で全体の半分。男性従業員の出産特別休暇制度は67.6%で、かなり普及しているといえる。
  介護支援関連で何らかの休業制度を導入しているのは全体の97.1%と、ほとんどの企業におよぶ。うち介護短時間勤務制度は86.7%とだいぶ広まっている一方、法定を上回る介護休業制度を持つ企業は約半数の48.8%にとどまる。
●  社内の雰囲気づくりはこれから
  こうした制度を社内に定着させるための取り組みとして、最も多いのは「制度内容を従業員に周知させる取り組みの実施」で42.2%に上る。以下「制度の利用促進に向けた情報提供などを管理者を通じて実施」が26.7%、「経営や人事の方針として明文化」が24.9%、「従業員が不在時・休業時のルールがある」が19.3%などどなっている。従業員が制度を利用しやすい雰囲気づくりという観点でみると、達成率は今ひとつのようだ。
  この背景として、企業によって意識の差が大きいことが考えられる。両立支援制度について「優秀な人材確保のために必要」と積極的な回答を示したのは73.4%。「従業員の労働意欲向上に寄与する」(71.3%)、「仕事の進め方が工夫されて業務効率が向上する」(51.1%)と評価する企業も多い。
  その反面、約半数の49.1%は「企業の負担が大きい」と答えた。「法律で決められたので導入する」(34.1%)、「職場に不公平感が生じる」(28.9%)など、制度自体に後ろ向きの企業もみられる。(いずれも「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)
●  重要性の認識は、いまだ不足
  今回の調査では、女性が能力を発揮しやすい環境づくりを積極的に支援する企業の割合が高くないことも明らかになった。「女性が能力発揮できるよう環境を整備する」ことを「重視する」企業は21.7%、「やや重視する」が35.7%である。
  男女を問わず「従業員の仕事と家庭を支援する」ことについても「重視する」が16.6%、「やや重視する」が33.4%にすぎない。
  家庭と仕事を両立させるために、職場環境を大幅に改善する必要があることを理解している企業はいまだに多くないことが分かる。
出所:厚生労働省「両立支援と企業業績に関する調査・分析結果の概要」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.07.18
前のページにもどる
ページトップへ