>  今週のトピックス >  No.1271
労組の影響力、規模や雇用状態によって差
●  労組の影響力は引き続き大きい
  労働組合の組織率が低下して久しい。50年前の1955年は35.6%の組織率だったが2005年では18.7%となり、2割を下回った。組織率の推移だけをみると労働組合は崩壊寸前という印象だが、労働組合員数ではさほど減少していない。組合員が一番多かった1982年の1,252万人に比べ、現在は1,013万人と約2割の減にとどまっている。
  つまり、組織率低下の原因は「組合離れ」ではない。近年増加している非正規社員が労働組合の組合員になっていないために、非正規社員が増加して分母が膨らんだためであると考えられる。
  正社員に限った労働組合加入率は相変わらず高いと推定され、企業の経営に対して大きな影響力を持っている。
●  労組規模の小さい企業ほど労組の影響力も小さい
  厚生労働省は労働組合の活動実態を毎年調査している。それによると賃金や退職給付の見直し改定において、労働組合が「関与した」のは96%、しなかったのはわずか4%である。関与の方法では「労使協議機関で協議」したのが88.3%、「団体交渉を行った」のが43.5%となっている。
  協議した場合の内訳をみると、「協議事項」として取り上げられたのは67.5%、「同意事項」が46.6%、「意見聴取事項」、「報告事項」がそれぞれ14.9%、15.5%となっている。
  この四つの事項の違いを解説すると、労組の意向が最も重視されるのが「同意事項」で、「協議事項」となると必ずしも労組の同意は必要とされない。労組の意向がどれよりも尊重されないのが「報告事項」で、報告に加えて労組の意見も聞くのが「意見聴取事項」である。
  組合員数が5,000名以上の企業では、「協議事項」79.4%、「同意事項」37.5%、「意見聴取」11.9%、「報告事項」12.0%であるのに対して、同300名未満の企業では「協議事項」が54.2%と少なく、「同意事項」36.5%、「意見聴取」21.9%で、「報告事項」が25.4%と比較的多い。規模の小さな企業では労組側の意向が尊重されない傾向にある。
●  パートタイマーへの取り組みは遅れている
  賃金制度の能力主義・成果主義化については、「評価方法が妥当であれば納得できる」とする回答が半分近くあるが、一方で「労働者が不利にならない措置が必要」であるとする回答も3割ある。
  労組のもうひとつの課題である増加するパートタイマーへの取り組みについては、「労働条件や処遇の改善要求」をするのが57.4%、「相談窓口の設置・アンケートでの実態把握」が37.3%、「組織力の強化」が34.7%などとなっている。しかしパートタイマーに対する何らかの取り組みを実施している労組が全体の25.5%に過ぎないところをみると、全体としては遅れているといえるだろう。
出所:厚生労働省「平成17年労働組合基礎調査結果の概況」「平成17年労働組合活動実態調査結果の概況」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.07.24
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