>  今週のトピックス >  No.1273
正社員の賃金、「業績・成果」「職務遂行能力」を重視
●  「賃金の決め方に納得できない」が4割弱
  正社員の賃金を決定する場合、半数を超える事業所において「業績・成果」および「職務遂行能力」を以前より重視する傾向にあることが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査で分かった。
  「多様化する就業形態の下での人事戦略と労働者の意識に関する調査」と題するこの調査は、就業形態の多様化が雇用管理の在り方や労働者の意識に及ぼす影響などについて明らかにしている。正社員のほか、アルバイト・パートなどの非正社員の活用に関する事業所の取り組みや労働者の意識調査なども盛り込まれ、興味深い内容となっている。
  これによると4割弱の正社員が賃金の決め方に納得していない。その理由として、約半数が「仕事への努力が正しく評価されていない」ことを挙げている。所得格差が進行している中、企業労働者の厳しい一面が表れた結果だ。
●  企業と正社員の意識格差がくっきり
  企業が正社員の賃金(基本給)を決定する場合に、職務内容、学歴、勤続年数などのうち、どの項目を以前より重視するようになったか聞いたところ、6割前後の企業が「業績・成果」および「職務遂行能力」を挙げている。課長相当職や部長相当職だけでなく、一般社員についても同じ傾向がみられた。
  一方、正社員が会社による自分の賃金の決定方法に納得しているかについては「納得していない」が35.5%で、「納得している」を上回っている。「納得していない」正社員に対して理由を聞いたところ、「仕事への努力が正しく評価されていない」が47.2%と、ほぼ半数を占めた。
  企業と正社員の間で意識に大きな差が表れたのが、「就業意欲」である。企業側の認識では、すべての年代において「就業意欲が高まった」割合が「低下した」を上回っている。しかし従業員の意識を尋ねると、逆にすべての年代で「低下した」のほうが多い。
  この背景として、成果主義の導入が影響していると思われる。この数年、企業の多くは構造改革を進める過程で年功序列主義を止め、成果主義の導入を進めてきた。しかし残念ながら「正しい成果主義」の導入ができておらず、社員にとっては「一生懸命頑張ったが、結果として成果が上がらず、給料が下がる」という「結果主義」になってしまった場合が多い。
●  企業も従業員も納得して働ける環境づくりを
  この調査により、企業の考え方と、非正社員も含めた労働者の意識との間に大きな差がある点が浮き彫りとなった。これは、企業が今後の人事戦略を立てる上で有効な指針になると思われる。
  団塊の世代が退職して労働力不足が懸念されるいま、正社員と非正社員のやる気を引き出しながら、優秀な人材をつなぎ止め、いかにして企業の業績向上に結びつけるかが企業にとって大きなカギとなる。
  今回の結果を参考に、企業と従業員がお互いに理解しあい、納得して働ける環境づくりを目指したい。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様化する就業形態の下での人事戦略と労働者の意識に関する調査」
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.07.24
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