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根付き始めた新しい企業年金
●  厚生年金基金の数、最盛期の3分の1
  2001年に始まった企業年金の大変革は、株式市場の好調に支えられ、着実に進行している。
  改正が始まったきっかけは、確定拠出年金法と確定給付企業年金法の成立、そして厚生年金基金の代行返上の開始であった。最盛期には1,900近くあった厚生年金基金も、代行返上が進んだ現在(※1)、従来の基金の形態のまま存続しているのは651基金である(※2)
  そのうち総合型(※3)が518件と大部分を占めているところをみると、単独型・連合型(※4)はおおむね代行返上を終えているようだ。将来部分だけでなく過去部分の返上も終えて確定給付企業年金に移行した基金は770ある。
  解散した基金は494で、最盛期の基金数の4分の1以上にも当たる(※5)。一時は1,200万人以上いた加入者数も、今や半分以下の約530万人となった。
  過去分を返上した770件の厚生年金基金のうち、753基金は確定給付企業年金に移行した。これは確定給付企業年金全体(1,636件)の半分弱を占めている。そのうち596件は基金型(※6)を選択した。
●  適格年金の制度移換も軌道に乗る
  2012年3月で制度が終了することが決まっている適格退職年金は、最盛期は9万2,467基金あったものの、今年3月末時点で4万5,090件(※7)と半分以下まで減少した。最高で1,078万人だった加入者数も、現在は567万人とやはり半分以下になっている。
  適格退職年金終了後の受け皿としては、確定拠出年金、確定給付企業年金、中小企業退職金共済(以下、中退共)がある。この三つの制度の動向をみてみよう。
  確定拠出年金(企業型)は、株式市場の好調を背景に急増している。規約数は1,936件、加入者数は約193万人になった(※8)
  新しい企業年金とされる確定給付企業年金は、当初ほとんどが厚生年金基金からの移行によるものだったが、ようやく新設数が移行数を追い抜いた。厚生年金基金からの移行を除いた新設数は883、加入者数は384万人である(※9)
  中退共への移換件数は、9,494事業所、加入者数は約28万人である(※10)
  確定給付企業年金、確定拠出年金への移換は、ほぼ軌道に乗ってきたといえるだろう。それに比べると中退共はまだ出遅れているが、今後の金利上昇によって企業年金の運用利回りが上昇すれば、どの制度も移換が一層促進されると期待できる。
(※1) 7月1日現在
(※2) 今年1月時点では669件、2004年12月1日では736件であった。
(※3) 同業種の業界団体、販売店・下請組織、同一地域内の協同組合等を中心に中小企業が集まって設立するタイプの企業年金。
(※4) 単独型は1企業で導入するタイプ、連合型は企業グループで導入するタイプの企業年金。
(※5) 代行返上した後の解散も含む。
(※6) 母体企業とは別に基金を設立するタイプの企業年金。
(※7) 2005年3月末では5万2,761件、2004年3月末では5万9,162件であった。
(※8) 規約数は5月末現在、加入者数は4月末現在。
(※9) 3月末現在
(※10) 5月末現在
出所:企業年金連合会「企業年金の現況」、中小企業退職金共済事業本部資料ほか。
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.08.07
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