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心の病、6割の企業で増加傾向
●  メンタルヘルスに対する企業の認識が広がる
  この3年間で、6割以上の企業において心の病が増加傾向にあることが、社会経済生産性本部の調査で分かった。2002年の調査で「増加傾向にある」と答えた割合は48.9%、2004年は58.2%だったが、今回は61.5%と一層増えている。
  心の病の増減について「わからない」と回答する企業は急速に減少した。今までメンタルヘルスの問題をそれほど意識していなかった企業も、この数年の間に現状を明確に認識するようになったためと推察できる。
  メンタルヘルスは各企業が頭を悩ませている問題の一つであり、年々深刻化している。専属の担当者やメンタルヘルス対策室の設置など早急な対応を求められる中、現状では他社の事例などを参考に対処しているケースも多い。
●  最も多いのは30代
  心の病が最も多い年齢層は、「30代」が61.0%で圧倒的に多く、次に「40代」(19.3%)が続く。30代の割合が突出しているのは以前と同様だが、占率は急速に上昇している。この世代に精神的負担が集中する傾向が、より強くなっていることが読み取れる。
  職場の変化について聞くと、「個人で仕事をする機会が増えた」という企業は、7割近く(67%)で、「職場のコミュニケーションが減った」と回答したのは6割(60.1%)であった。「職場での助け合いが少なくなった」という企業も5割(49.0%)近くある。
  職場環境の著しい変化の背景には、厳しい人事評価制度や成果主義の導入などが大いに影響しているといえるだろう。
●  コミュニケーションや助け合いが減ると、心の病が増える
  職場環境の変化と心の病の増減には、相関関係がある。
  コミュニケーションが減少した企業では、「心の病が増加した」と答えた割合が71.8%に上っている。反対にコミュニケーションが減っていない企業では、心の病の増加した割合が46.0%にとどまる。その差は25.8ポイントと、かなり大きい。
  助け合いが減少した企業においても、心の病の増加割合は72.0%と高い。助け合いが減少していない企業との差は20.6ポイントにも達している。
  心の病の増加を抑えるためには、まず職場における横のつながりの回復がカギになるだろう。
  IT技術の発展は仕事の方法を大きく変えた。効率化が進んで業績アップに貢献している職場も多いが、その反面、従業員が一人で仕事をする機会も増えためメンタルヘルスに影響を及ぼす結果につながったともいえる。
  コミュニケーション不足を解消するには、一人ひとりの心掛けが大切である。その努力が組織の活性化につながって社内全体の風土が良くなれば、心の病の増加を抑えることができるのではないだろうか。
全国の上場企業を対象に2006年4月に実施。このようなアンケートはほかにほとんど例がなく、各企業の注目を集めている。今回の調査は2002年、2004年に続いて3回目。
出所:財団法人社会経済生産性本部 「『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果」
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.08.07
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