>  今週のトピックス >  No.1283
雇用保険、65歳以上の新規加入も検討
●  65歳以上の就労意欲を喚起
  この春以来、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の雇用保険部会で雇用保険制度改革に向けた検討が進められているが、このほど中間報告がまとまった。秋以降も検討を続け、来年の通常国会での雇用保険法等の改正をめざす勢いである。
  基本的な問題意識は、(1)人口減社会を乗り切るためにも、長く働き続けられる社会をつくる、(2)特に高齢者雇用を促進する、(3)国家財政が逼迫(ひっぱく)する中で、特別会計である雇用三事業が効率的な運用されているか検証する、という3点だ。
  雇用保険は現在、65歳以上の新規加入が認められていない。ただし65歳以前から加入している人については継続加入を認め、保険料も免除している。このような待遇差があるため、雇用保険に加入できない65歳以上の高齢者の再就労意欲をそいでいるとの批判が聞かれる。
  そのため審議会は、65歳以上の人が新たに雇用保険制度に加入できるよう検討する方針とした。週20時間以上働くなど、現在の雇用保険の加入要件を満たす65歳以上に対象を広げるのが基本方針。約500万人いる65歳以上の就業者のうち、200万人程度が要件を満たすとみられる。
  これらの新規加入者から保険料を徴収するかどうかは、審議会で今後議論の焦点となる。仮に保険料免除を認めれば、雇用保険財政を圧迫することは確かだ。しかし65歳からの新規加入者とそれ以前からの継続加入者との間で待遇の差が大きくなると、不公平との声が出るおそれもある。
●  雇用保険財政は好転
  高齢の就業者を守るセーフティーネットも充実させる。失業給付や職業訓練などの雇用保険事業の一環として対応する意向だ。
  その一方で、全体的な給付の引き締めも行う。短期間で就労と失業を繰り返し、失業手当を何度も受け取る人が多いことから、受給の資格要件を厳しくする方向で検討する。冬に仕事がなくなる寒冷地の土木作業員に向けた地域雇用対策の給付金制度は、廃止を含めて検討することなども論点に盛り込んだ。雇用保険三事業では一部事業の廃止を含む削減を課題として挙げている。
  雇用保険そのものは2003年の給付見直し以来、財政が好転している。2004年度では7,962億円の黒字であり、2005年度も同じく黒字の見込みである。
  雇用保険三事業についても、失業情勢の改善に伴って給付が減少したため、2004年度では1,301億円の黒字が出ている。こうした状況も考慮しながら、雇用保険全体の見直しがはかられることになる。
雇用安定事業、能力開発事業、雇用福祉事業
出所:厚生労働省「雇用保険部会の中間報告について」(2006年8月)
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.08.14
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