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相続税の物納、引き続き減少傾向
●  件数・金額が減り、処理割合は向上
  相続税の物納申請件数が7年連続で減少を続けていることが、国税庁の発表※1で明らかになった。平成17年度の申請は1,733件、金額にして817億円で、平成11年度から一貫して減り続けている。前年度の物納申請件数3,065件、申請金額1,288億円と比較すると、平成17年度は特に大幅な減少となったことが分かる。
  当局が物納申請を処理した状況をみると、処理件数は3,920件(対前年度比73.8%)、処理金額2,331億円(同76.2%)である。件数、金額ともに減少しているのだが、要処理件数※2に対する処理の割合は高くなった。前年度の処理割合は件数で47.1%、金額で39.0%であったのが、平成17年度は件数で50.9%、金額で41.7%と、ともに上昇している。
  これを受けて、未処理の件数は減少している。平成16年度5,968件であった未処理件数は、今年度3,781件にとどまった。
●  今年度税制改正で、物納制度が変わった
  相続税は現金納付が基本だが、財産課税という性質を考慮して、一定財産による物納制度も認められている。ただし実務においては、物納申請をしても審査の結果がなかなか分からなかったり、許可基準があいまいであったりと、不満の声があったのも事実だ。
  今回の国税庁発表によると物納申請に対する処理割合はだいぶ改善されているようだが、現場では依然として不平や戸惑いが大きい。
  そこで平成18年度の税制改正では、相続税物納に関して以下三つの点が新たに盛り込まれた。
(1)物納不適格財産の明確化
  抵当権が設定されている不動産や境界が不明確な土地など、一定の財産を「物納不適格財産」とし、原則として物納が認められない財産を明確化した。
  市街化調整区域内の土地やいわゆる無道路地の一定の財産は「物納劣後財産」とし、ほかに物納適格財産がない場合に限り物納を認める財産として明確化した。
(2)延納中の物納選択制度の創設
  相続税を延納中の者が、資力の状況などにより延納による納付が困難となった場合に、申告期限から10年以内に限り、物納を選択することができる制度を創設した。
(3)物納手続の迅速化
  物納申請の審査期間は「3カ月以内」と明記し、物納手続を迅速化した。
  これらの改正より、物納制度は以前より使いやすくなったといえるだろう。この機会に確認しておきたい。
※1 国税庁「平成17年度 相続税の物納申請状況等について」による
※2 「申請件数」+前年の「処理未済件数」
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.08.14
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